The Beach: Motion Picture Soundtrack
映画「ザ・ビーチ」は,すこし憂鬱で痛々しい青春もの,という感じでしたが,サウンドトラックの方は青空と明るいきれいな海と日光を思わせる曲を集めて,休暇にぴったりな一枚です。
特に#3 Porcelain,#4 Voices, #5 8 ballの3曲はクール&エモーショナルな名曲ぞろいで,続けて聴いているとリゾート気分に浸れます。
クールなテクノを中心に,心地よい曲やちょっとダークな気分の曲も並んで,全体としてはとても爽やか。夏には必ず聴きたくなります。
世界の使い方 (series on the move)
旅をテーマにした本は今日も多く出版されているが、大体は著者の好きなものだけ書き連ねたものか、たった数ヶ月滞在しただけで旅行先の国のすべてを理解した気になったものに分類される。どちらも旅の魅力や意味を追求しすぎて逆に自己を頑なに守っているように感じられる。
『世界の使い方』では統一された主題はあまり表に出されていない。時々目のくらむような情景描写や、はっとさせられるような言葉、愚かで魅力的な人々と出会う。それらは旅を続ける二人の前に現れては消えていく。彼らはときどき自分自身や母国について振り返るが、決して比較や評論に終始しない。
この作品を読むと無償に旅に出たくなるのはもちろんだが、日常生活の中でもで様々な知らない人、知らない風景に接しながら自分の社会から排除していることに気づかされる。個人的だが、電車内の人間観察が楽しくなったり、バイト先のお客さんと気軽にお話したり、ふと家の窓から見える月にうっとりしたり…。『世界の使い方』はその内容以上の「発見」を読者に与えてくれるだろう。
ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)
91-95年のユーゴ内戦 (ボスニア紛争) におけるボスニアと米国PR会社の行った情報戦を、同じメディアであるNHKが 2002年に丹念に取材し、そのPR会社の標的になった相手にも裏付け取材を行った丁寧なドキュメンタリーだ。NHK放映時の表題は「民族浄化」。その番組に盛り込めなかった内容も盛り込まれている。表題の「広告代理店」は当時これしか日本語が引き当てられなかったのだろうが、正確には「PR会社」。つまり本書は PR(パブリック・リレーション) の役割と手法について、学ばせてくれる内容となっている。
内容は、ボスニア紛争の起こりから、その集結までを 14章の時系列に紹介。ボスニア・ヘルツェゴビナの外相に就任したシライジッチ氏とPR会社 ルーダー・フィン社のジム・ハーブ氏が、その時々をどう分析し、どのような手を打ったのか、その効果までも具体的に紹介している。10年前の内容になっているが、ルーダー・フィン社では、この紛争への協力を行った後、かかった費用を回収するために全米PR協会宛に、自分たちが行ったPR活動について詳しい報告を提出しており、関係者の曖昧な記憶に頼るのではなく、事実に基づいた内容が紹介されているので、シンプルだが非常に迫力と説得力のある内容になっている。このあたりはさすが NHK。
日本でもネットの普及により、単なるテレビCM、単なる広告というものの価値が下がってきた。その結果、広告ではない「PR」に注目が集まりつつある。広告とPRの違いについて解説する書籍も増えたので、それらを一読して前提知識を持ってから、本書を読むのがお薦め。現場で、PRのプロが何に気がつき、それに対してどういう手を打ったのか、一連のビックプロジェクトとして追体験することができる。内容には少し物足りなさは残るものの、読みやすい1冊としてお薦め。
セイヴィア [DVD]
この映画は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を経験した監督が、民族紛争の醜さ酷さを平和な世界に住んでいる人(アメリカ人?)に理解してもらうために作った映画だ。
妻子をテロで失い、個人的な復習の為にイスラム寺院を襲って惨殺した米兵がギイと名前を変えフランス外人部隊へ入る。その後ボスニア紛争のセルビアへ傭兵として参加する。この役をデニス・クエイドが演じているが、もともと能天気な役が多かった彼が、なかなか渋い演技で、今まで見た中では一番良かった。
このギイは、平和な世界に住んでいる我々を、悲惨で醜い戦争の世界連れて行ってくれる道案内として存在している。
民族戦争を行っている人たちの価値観と我々(いわゆる西側?)の価値観の違いを、彼の行動を通して示してくれるのだ。
紛争自体はボスニア、セルビア、ムスリムが3つ巴の戦いをした為非常に分かり難いが、映画ではなんの説明もなく淡々と描画されており、注意深く見ないと理解でない。しかし、監督にとってそういう事ははどうでもよく戦いの中で行われた残虐行為をそのまま何の装飾しないで描く事であの紛争の醜さを表したかったのだろ。
ムスリム人に捕虜となりレイプされたセルビア人の娘が、身ごもって故郷へ帰ってきた時の家族の仕打ち。生まれた赤子に対するギイのこだわり。等、見るところはたくさん有る。
ともすれば忘れ去られそうになる彼の地の紛争の、真実の姿を伝えてくれる貴重な映画だと思う。一度は見て欲しい。