壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)
とっても損してる作品です。
本の帯のキャッチコピーは安いし、知名度を上げた映画も原作を下回ってます。おまけに、上巻を読んだだけではこの作品のよさがさっぱりわかりません。
下巻になってはじめて、主人公吉村貫一郎の誠実さ、息子嘉一郎のひたむきさ、斎藤一の熱い魂がビカビカと輝きはじめます。絶対に上巻から下巻の「最後」まで読んでください。大野次郎右衛門がとどめの隠し玉を用意してます。
思い出しただけで泣けてしまうフレーズがこれでもかというくらい散りばめられてます。本当に泣けてしまう作品なので泣けるとしか言いようがありません。くれぐれも、上巻だけ読まないようお願いします。下巻だけでもダメよ♪
日輪の遺産 特別版 [DVD]
敗戦を目前にした1945年8月。3人の軍人が、軍が戦争初期に獲得したマッカーサーの隠し財産を、敗戦までに神奈川県内の地下壕に隠匿する密命を帯びる…。そして、その莫大な額の隠し財産は戦後日本の再建の礎になるはず…。フィクション作品としてはすごく興味深いテーマです。
中心となる軍人たちや、作業をする生徒たちの級長である久枝、教師などを演じた出演者の演技も真に迫って素晴らしいものでした。真柴少佐が林の中を他の2人と走るシーンも、軍人の走り方を意識したものになっていましたし、セットや小道具も丁寧に作られていたと思います。大蔵省から陸軍に出向中でいかにもインテリでエリート然とした小泉主計中尉、2人の護衛役となる曹長もクールでかっこ良いです。
しかし、ミッキーカーチスや八千草薫の出てくる現代のシーンの大半は不要なのでは…と思いました。現代から過去を回想するシーンから物語が始まる方法があまりにベタで、違和感を持ちました。第2次大戦を舞台やテーマとして撮られた最近の日本映画は、このパターンが多すぎるのではないでしょうか。冗長な現代のシーンと、ハラハラさせられる過去のシーンとで、ちょっと落差を感じてしまいました。現代のシーンが過去を振り返ってベタに正当化したり美化する手段にしか使われていないので、少々飽きてきました。その分を、もう少しストーリーそのものを描くことに使ってほしかったように感じました。
現代のシーンをのぞけば、途中まではハラハラドキドキさせられる展開で、真柴少佐や小泉中尉、曹長が困難を乗り越えて隠し財産を守り通す様子や、生徒たちが作業を進めるのを、心の中で「がんばれ!」と応援してしまいます。しかし、終わり方はあっけない。
財宝の秘密を守るために小泉主計注意が拳銃自殺を遂げるのを見届けたマッカーサーが、「こいつら日本人の心は鋼鉄でできているのか!」とさけびます。冷静に見るとちょっと手前味噌でわざとらしいですが、それでも日本人の自尊心をくすぐってくれる心地よい台詞です。また、少女たちは守るように命じられた財宝を、屍となっても守りぬきました。しかし、結局、財宝は地下に封印されてしまいます。「うーん、これおでは少女たちは犬死じゃないのか、犬死を美化するなよ」と心の中で突っ込んでしまいました。原作を読んでいないので何とも言えませんが、日本人の強さや高潔さを描くなら、現代の人間に過去を振り返らせて語らせるのではなく、もう少し他の方法や表現はなかったのでしょうか。
ラブレター [VHS]
タイトルとは裏腹に、物語の方は終盤まで愛も恋も語られず割と淡々と進み、いい加減退屈していたところへ、最後に「手紙」が登場します。それを読み進むうちに涙が溢れ出る中井貴一とともに、私も泣いてしまいました。
貰いたくはありませんが、こんな手紙を貰ったら泣かずにはいられません。
愛を描いた映画で泣き飽きた人、こんな映画で泣いてみるのもいいですよ。
鉄道員(ぽっぽや) [DVD]
何度見ても泣けてしまう。
不器用な昭和の男といえばもう、健さんしかいない。
何にも前情報もなくこの作品を見た。
広末涼子演じる娘が幽霊なのか、健さんの幻想だったのかは分からないが、
とにかくビックリした。
なんだか「シックスセンス」的なやられかたをしてしまった。
で、嗚呼、日本人がシックスセンス的なものを撮るとこうなるんだなと、
一人得心した次第です。
仕事のために家族を犠牲にしてしまう、不器用な昭和の日本の男が描かれています。
今や個人主義や利己主義は欧米だけのものではなく、この日本にも着実に浸透しています。
仕事とは何でしょう?
「おとさん」にとって仕事とは、列車を滞りなく走らせ、駅を守ることでした。
列車に乗る人達の為の大切な仕事だったのです。
「おとさん」にとって仕事とは、自分だけのためのものではなかった。
列車を使う人達のためでもあった。
どんなことがあっても家族を犠牲にしちゃあいけない。
しかし図らずも、人のために自分達が犠牲になってしまうことも厭わない、
そんな人がいたっていい。
国を守るために戦地に赴く兵士達も、こうではないだろうか。
平成生まれの人達には理解し得ないかもしれない、昭和の不器用な男のファンタジーです。
霧笛荘夜話(初回)
浅田次郎さんの連作短編集「霧笛荘夜話」を読みながら、霧笛荘の6つの部屋に住む不器用だけれども誠実に生きていた6人の人間模様を、ロマンチックに音楽で表現していると思います。
「不幸の分だけの幸せは、ちゃんとある。どっちかが先に片寄っているだけさー」の小説のくだりも、いま生きている人々に投げかけられたメッセージとしてとらえられますよね。
本当にこの高嶋ちさ子さんと加羽沢美濃さんのChisa&Minoメロディーを
原作を読みながら鑑賞することは最高だと思います。