ルーマニア・マンホール生活者たちの記録 (中公文庫)
「ルーマニア」といわれても、知っていることは、ほとんどない。
東欧の国、チャウシェスクによる独裁があった国、たしか、吸血鬼ドラキュラの国。
その程度しか浮かばない。
著者の早坂隆氏は、2001年から約2年間、ルーマニアに滞在し、現地の言葉を習得しつつ、マンホールの下に暮らす住人たちを取材した。
マンホールの下を住居にしていたのは、チャウシェスク政権が崩壊した後、街中に現れたストリートチルドレンたちだ。
親に捨てられた孤児。
捨てられてはいないが生活苦のため家族を離れて暮らし始めた子ども。
人種差別や虐待を理由に、孤児院から逃走した子ども。
彼らは、物乞いや、廃品回収、ときには万引き、スリ、引ったくりなどで、生計を立てている。シンナーやタバコが嗜好品になっている。
日本に日本人として生まれ、育った人間と、ルーマニアの貧困層に生まれて育った人間との間には、どうにも埋められない溝のようなものがある。
しかし、この本を読むと、早坂氏がその距離を埋めようと努めたことが分かる。
日本人とルーマニア人との間に距離はあるが、早坂氏は彼らと「同じ人間」として心を通わすことができた瞬間があったのではないかと感じる。
マンホール生活の模様は、丁寧に記載され、臨場感があふれる。
子どもたちがマンホール生活を始めた経緯や、彼らの家族のことを細かく聞き出している。
相手が子どもでも、正面から、厳しい質問をすることもある。
子どもたち、それぞれの言動から感じたことも、正直に書いている。
私にとって、とても遠かったルーマニアだが、この本で少し近くなった気がする。
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説得力に富む一冊でした。日本人拉致問題について「粘り強い友好的交渉の継続」などと平和ボケした一知半解の愚説をマスコミで披露するいわゆる「国際政治学者」にも一読を推奨したい一冊である。