現在のところ文庫版で読める最も充実した『アレクサンドロス東征記』と言えます。 ただし、近年の西洋古典関係翻訳書の傾向として母音の長短を省略する点は、いささか感心しません。「本書が書かれたのがローマ時代だから不必要だ」などというのは、まったくの詭弁でしかあり得ません。もしも、その論法が通用するのならば、本作に記されている「ヘパイスティオン」とか「カッリステネス」etc.といった人名表記も、ローマ帝政期の発音に則して書き改めなくてはならない、ということになってしまいましょう。前四世紀の出来事をアッティケー方言で再現している原著者への敬意を表する為にも、可能な限り古典期の発音で書き表して頂きたいものです。 往年の高津・呉両氏が活躍されていた頃が懐かしく感じられます。
ヒストリエ最新刊、アレクサンドロスの登場です。
「マンガ世界の歴史」レベルの知識しかないので世界史年表&地図帳見ながら楽しんでますが、歴史の予備知識なくても面白い!
でも絵柄はとっても「寄生獣」なので、いつミギーが出てきても驚かない!
主人公のエウメネスは実在の人物で、つまりWikipediaとか見れば彼の一生は分かってしまうのですが…分かった上で面白いです。マンガの方は相当、創作ですしね。でもその創作はマンガっぽくなく、話に厚みを持たせていい感じです。
惜しむらくは刊行ペース!完結までにあとどれだけかかるやら。買うならいまのうち、大長編傑作になるかもです。
本編『アレキサンダー』は、なかなか良い出来だと思います。 英雄の内面を描いた作品ですが、スケールも大きいし、戦闘シーンも迫力ありますし、三時間ちっとも長く感じませんでした。 最近の歴史物、『トロイ』、『キング・アーサー』等と見比べても、こっちの方が断然、面白かったです。 アメリカで酷評された理由がわかりません。歴史物が続いて、題材自体が飽きられかけてたのでしょうか?。作品自体は、全然悪くないです。 特典映像ですが、残念なのは、未公開シーンが入ってない事。(絶対、あるはず。) もしかして、ディレクターズ・カットを出すつもりなのでは?。 しかし、メイキングは充実しています。監督のこれまでの人生と、撮影過程を重ね合わせた壮大な作りになっていて、これまでのオリバー・ストーン作品も、所々に挿入されています。 撮影の舞台裏も良く収められていて、特にコリン・ファレルとの撮影中のやりとりが、たくさん入っています。 値段が高めなので、通常版と迷ってられる方もいると思いますが、監督またはコリン・ファレルのファンの方なら、おすすめします。
自分も漫画『ヒストリエ』の面白さにはまって、史実がどうだったのか知りたくて手にしました。 漫画の主人公エウメネスについては、本編にはでてこないのですが、後半の資料篇、後継者のところで2ページを割いて書かれています。正直自分はこれを読んでエウメネスという人物にしびれました。そしてどうして岩明均氏がこの人物を主人公にして漫画を描こうとしたのかが、わかるような気がしました。 『ヒストリエ』ファンの方で、その時代の歴史を知りたいと思っている方に入門本としてお薦めします。
「大王・大帝」と称される人物役にはコリン・ファレルは気品不足ではないか?と、当初二の足を踏んだ。 神の子であると信じ、母の邪な魂を引き継いでいない事を心に願い常に高潔たらんとした事。その道が途方も無い戦いへの道であり、何かから逃れる道でもあった事。冒頭一時間でコリンへの懸念は完全に吹き飛んだ。苦悩し走る・・そう、冒頭の暴れ馬を乗りこなすシーンと彼の人生は被る。行き着く先が血まみれの谷と分かっていても走り続ける、英雄であるが故に走り続けねばならないと抱え込み疲弊する精神、これだけ「人」としての姿を見事に演じられるとは・・。アンジーの老け役も及第点である。 確かに彼は夢想家だっただろう、でもこれだけの苦悩と葛藤を抱え只管未開の地に走りつづけた美しい馬、その魂の帰り着いた先はどこであったか・・余韻溢れる幕切れである。 もう一点、男同士の関係が普通であった紀元前当時、ヘファイスティオンとの友愛には何度も胸が詰まった。私見だが、「共に死すは男同士の特権」「共に生きるは男と女の特権」そう思っていたが、この作品を見て「生も死も共にするは男と男の特権」と感じた。少々の嫉妬も感じる。二人が自分達をアキレスとパトロクロスに例える点やギリシャ神話の神々の逸話を引き合いに出すのもとても興味深く、心憎い演出。 競技場・空中庭園・特に戦場の素晴らしさ。流石オリバー・ストーン監督。彼の描く戦場は正に地獄。前半のカウガメラの戦いと後半のインドの戦いで趣を全く変えて見せているのも流石としか言いようが無い。インドの戦象軍に立ち向かうアレキサンダーの姿が胸を締め付ける。 ストーリーテーラーに名優アンソニーホプキンスがいるため歴史下地が無い人にもある程度は分かりやすく出来ている、只、100%愉しむには世界史・神話の知識は必須。 興行成績を狙った派手な作品とは感じなかった、寧ろ重厚な人間ドラマ。もう一度じっくりと見たい。
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