初めて手にしてから、ウン十年となります。幼い恋の行方と結末に涙とともに歯ぎしりしてしまうのは私だけでしょうか。理屈ぬきで青春の痛みを感じる悲恋小説です。確か、この文庫には「春の潮」も収められていたと思います。こちらも佳品です。なお、映画化された木下恵介「野菊の如き君なりき」も、かなり泣ける作品です。
のっけからオープニングの綿摘みの格好って笑顔で駆けて来る聖子ちゃんにおぉ~!(笑) 主題歌の『花一色』も耳に残る名曲です。 ちょっとコミカルな雑巾がけシーンがあったり とうもろこしを収穫しながら歌を歌うシーンは必見です。本当にうまい! 樹木希林 演ずるお手伝いのお増がだんだん同情して優しくなっていくんですがその演技にも泣かされます。 涙なしには観れませんよ~。ぜひハンカチの用意をしてからご覧下さいね。
40年程前、丁度15〜6歳の頃…薄い文庫本を読んだ。最近、新しく買って読み直したが、文庫本のカバーには昔と変わらず野菊が咲いていた。
政夫がその後どのような人生を送ってきたのか…生家はお化け屋敷と呼ばれているらしい。73歳になる政夫が約60年振りに船にゆられ、今も心に宿る民子の墓に野菊を手向け、一人静かに弔うために進んでいく。そして、政夫15歳、民子17歳の頃の回想シーンが始まる。老いた政夫はそう遠くない死を前に、やっと民子の墓参を自由に出来る身になったのだろう…生家の没落を語る船頭の話を微笑し聞き流す。政夫が民子の墓前で帽子を静かにとる…遠景にて影絵のごとく描かれる。我々は遥か遠くからその影を追うだけでいい。知らぬ間に涙が頬を伝っている。
原作では民子が亡くなり10年余で始まり、結びは政夫も余儀ない結婚をし長らえているで終わるが、最後の最後は民子への純粋で純潔な至上の言葉が添えてある。監督は政夫を73歳にして、まどろむような物語を追っていくが、観る側としては、その長き空間を政夫はどのようにして埋めてきたのか…夢のような想像の時を与えてくれ、そこには、原作を壊すことのない、美しい時間が綴られている。民子の美しい横顔を想い、時として自らの心を洗うのもいい。木下監督の最高作と言っても過言ではないだろう。
今でも頑張っている土曜ワイド劇場の第二弾放送。テレビドラマにしてはちゃんと作り込んでいて見ごたえ十分です。松田聖子と比べられるととても心外です。
伊藤左千夫という人物は、30代で詩の世界に入り、正岡子規の精神と人格を信仰し、師事をしていた。そして子規の没後、伊藤左千夫の発表した『野菊の墓』は夏目漱石によって高い評価を受けている。これらのことから、伊藤左千夫という人物は詩と文学の世界において、卓越した能力があったことが分る。偶然ではあるが、私の出身がちょうど四国の愛媛県ということもあり、とても親近感を持って作品を読むことが出来た。
作品は大人となった主人公の政夫が、懐古するところから始まる。10年間も思い続けるような、そんな恋が果たしてあるのだろうか。冒頭から私は少々疑ってかかってしまった。しかし、読み進めていくにつれて、確かに自分か同じ出来事を体験したならば、忘れられなくなりそうだと感じた。最終的に結ばれない恋であったが、政夫と民子の共有した時間は儚く美しかった。詳細に二人の感情が描写されており、特に野菊の問答をする場面は最大の見所である。
私が本作品で強く思ったことは、秘めた思いを大切にすることもいいが、しかし、伝えたいことは機会を逃すと取り返しがつかないということだ。作品の時代背景が、二人を別つ1つの要因であったと考えられるが、常識に打ち勝つ思いと行動力があれば、二人の思いは成就したのではないかと考えさせられた。
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