Hot Rats
個人的には、ジャケが怖い。サバスの一枚目と同じくらい怖かったです。
後に観たホラー映画「リング」がたいそう怖かったのは、このアルバムのデジャヴでしょうか。
ま、それはともかく、参加メンバーは、
キャプテン・ビーフハート:ヴォーカル
シュガー・ケイン・ハリス:ヴァイオリン
ジャン・リュック・ポンテイ:ヴァイオリン
ジョン・グーリン:ドラム
ポール・ハンフリー:ドラム
ロン・セリコ:ドラム
マックス・ベネット:ベース
シュギー・オーティス:ベース
そして
フランク・ザッパ:ギター、オクターヴ・ベース、パーカッション
イアン・アンダーウッド:ピアノ、オルガン、クラリネット、サックス
あくまで私個人の感想ですが、これはザッパのある意味最高傑作じゃないでしょうか。ザッパの卑猥な詩歌がない分、演奏(特にギター)面で勝負の作品です。
ザッパ得意のライブ演奏からの編集という手法は今回は目立たなくて、あくまでオーソドックスなスタジオ録音です。その分、イアン・アンダーウッドが担当するメロディやハーモニーが実に愛らしく胸にじわーっときます。
私自身、もうかれこれ35年以上聴いていますが、飽きませんね。ハードロックとかサイケとかジャズ・ロックとかジャンルを超えてすばらしい。この聴く者を酔わせるような創造的なパワーはいったい何なんだろう。70年代のザッパにはない強烈な求心力があります。
Jazz From Hell
ザッパの雑派な音楽性をバンドではなく打ち込みに凝縮した、
内容の異様に濃い傑作。異常です。
まさに鬼才が生み出した捻くれモノ達へのアルバムです。
これまで様々な音楽にそれなりに親しんできた方なら、
このアルバムの凄さが分かるはずです。
フランクザッパ・ストリート (ちくま文庫)
本屋でササーッと移動しながらチラッと棚に目をやったときに「んまぁ~っ、なんちゅうキュートな本っ!!」と見かけにつられて手に取ったこの本のページをめくってあら、びっくり。ジョ、ジョニー・デップぅ~?!ファンとしてこれを見過ごしていいもんか?いや、あかんっ!!というわけで早速立ち読み開始。「う~ん、恋のライバルがジョニー・デップって……あんたパンダやん」と笑いを噛み殺しながら肩震わせて、しまいにゃそのパンダ(名をワイワイと言う)に母性本能をくすぐられ、買ってしまいました。トホホ。
でもね、これがいいんですよ。書評読んで「ほ、欲しい」と思った本でも現物見て「ゲッ、ページ数少ない」とか「字がでかい」とかそんな理由で買うのをやめること多々あり、の私にとってはこの本も買うのをためらうようなページ数やったんですけど、「う~ん、この見かけ(装丁)にこのパンダ、絶対面白いに決まってるぅ~。だってジョニー・デップ出てるしぃ~(字面だけやけど)」と無理やりこじつけて買ったとは思えんぐらいほのぼの楽しい(そう、楽しいのよ、小説やのに)、そして切ない作品なんです。登場するキャラ全部どこかしら可愛くて(←見かけか中身が)、誰しも感情移入できるキャラがいるはず!って言ったら言い過ぎ……かもしれませんがでもっ!でもそれでもいいんですっ!!特に仮面男と(パンダの)ワイワイの友情物語には涙ちょちょ切れるぅ~。タイトルからもわかるように、音楽&映画ファンの心をくすぐるような台詞やキャラ設定があるのも嬉しいっす。ジャケ買い好きの人も「見かけより中身よ」ってな人も、どちらにもいけるんじゃないでしょうか?ちなみに私は持ってるだけで嬉しいです。そんな本も珍しいけど。
【国内版】イヴニング・ウィズ・フランク・ザッパ デューリング・ウィッチ・ザ・トーチャー・ネヴァー・ストップス [DVD]
届いてから驚きましたが、このDVDには「日本語字幕」は一切
入っていません。歌詞対訳はもちろん、間のしゃべりなども
いっさい翻訳がありません(映像でも、紙でも、存在しない)。
JASRACへの支払いや字幕のオーサリングコスト等をケチって
収支を合わせるための施策でしょうが、たいへん残念です。
なお、本作にはボーナストラックとして、
「十代の娼婦(旧名:娘17売春盛り)」のライブ
「シティ・オブ・タイニー・ライツ」のライブ
「我こそ詰まるところ己なり」のPV
の映像が入っています。Amazonの楽曲情報にこれらの記載が
無いので記しておきます。あとは、付録のブックレットに
スコット・チュニス(ザッパバンドのベーシスト)による
ライナーを訳した文章が5ページ強ほど掲載されています。
映像はもっさりしたビデオクオリティで、古さを感じさせますが、
演奏はもちろん素晴らしいです。未見なら必視聴ですね。
Burnt Weeny Sandwich
私は、真に革新的であった、60年代のザッパとマザーズの作品が大好きです。
70年代特に後半以降の、ハイテク化した、ロックバンド仕様のザッパ・バンドももちろん演奏・フィーリング・批評精神において他の追従を許さぬものですが、60年代マザーズには、美醜ヘタウマ玉石混交の混沌とした、何物にも替え難いノスタルジックでナイーブな魅力があります。
本作はあのギター弾きまくりアルバムの超名作「ホットラッツ」(1969年)の後にで出た作品ですが、地味で難解な作品の印象を与えているようで、実際にはあまり聴かれた作品とは言えそうにありません。しかしこれは「いたち野郎」(1970年)と並ぶ、60年代のザッパとマザーズの奇跡の音楽的遺産のようなコア作品です。
それと特筆すべきはジャケです。シュールでかつブラックユーモアあふれる、デザインは悪趣味ギリギリの傑作でしょう。ちなみに当時このLPレコードは中古盤屋では高嶺の花で、私がゲット出来たのは、バーキング・パンプキンが1986年に発行したリイシュー盤です。
楽曲では、とにかくシュガー・ケイン・ハリスの黒光りするヴァイオリン・ソロをフューチュアした大作LITTE HOUSE I USED TO LIVE INが最大の聴きものでしょう。この曲1曲を聴くためこのアルバムを買う価値はあります。
またザッパの一つのルーツでもあるドゥーワップとバロック音楽、ジャズの融合は鮮烈です。ザッパの場合、決して思いつきやこじつけではなく、計算づくで、しかもあくまでエンターテイメントとして、やるところが凄いと思います。一般の音楽家には、ここまでの気力、体力、胆力は望むべきもありません。まさしくザッパだからなし得た、真のプログレッシブ・ロックです。
とは言え、「ランピー・グレイヴィ」(1968年)や前述の「いたち野郎」、「アンクルミート」(1969年)同様に、ラジカルで大胆な手法を駆使しているがゆえに、ザッパ作品中では決して聴き易い作品ではありません。70年代以降のザッパを聴いて、ザッパの世界に興味を持たれた方が聴くことをおすすめします。