自分も趣味で詩を書いたりしますけど、この人の詩からはだいぶ影響を受けています。 休むことを知らずに繰り返される日常の中に消えてしまいそうな切ない感情を表現することが、本当に上手い人だと感じました。
脚本、監督の演出、役者たちの熱い演技のぶつかり合い、何もかもが素晴らしい。
殺人事件を取り扱ってはいるものの、単純な勧善懲悪や、推理もの、サスペンスにはとどまらず、成り行きや運命に翻弄されてしまう人間達の哀しさが存分に表現されている。
含みを持たせたラストがまた心憎いばかりで、全く非の打ち所のない作品である。
戦時中に作曲されたという交響曲3番はすばらしい傑作である。全3楽章構成で「静かなる序曲ー精神の誕生とその発展」「諧謔について」「死についての諸観念」というそれぞれの標題を見ただけでも、この曲がいかに並々ならぬ内容を持っているか、察しがつくというものだろう。たとえば「死についての諸観念」は戦争の影を宿すが、不思議な明るさが漂っている。これはなぜか?この不気味さは何事なのか?
録音はいいし、湯浅卓雄指揮アイルランド国立交響楽団の演奏も深い。諸井の他の交響曲も聴いてみたくなるできばえだ。解説文は日本語で充実の極み。
米軍に捕まり俘虜(捕虜)となり収容所に送られるところから始まり、残りの大部分は収容所での生活について書かれていて、最後に日本に帰還するところで終わる。
戦争小説というよりは、収容所の生活の記録という感じで、特に周りの人の戦歴・性格などを細かく書いている部分が多かった。
読んでみて、筆者は人のことを見抜く洞察力と記憶力が抜群に良いなぁ、と感心した。
もともと三冊だった本を一冊にまとめたものらしく、たまに被っている描写があり、何よりページ数が多くやや冗長とも感じたが、最後まで読みきると、あたかも自分もそこで生活していたかのような気分にもなった。
当時の空気を感じることができて、そういう意味では、とても面白い本だと思う。
野村芳太郎監督が大岡昇平の原作を映画化した彼の代表作の一つです。当時雑誌「シナリオ」に掲載された新藤兼人の脚本は見事でしたが長大で、映画化にあたってはかなり短くされているはずですが、よくここまでコンパクトにまとめあげたと思う。
特筆すべきは出演者たちのハイレベルの演技で、裁判に関わる人間と証言者を丹波哲郎、芦田伸介、佐分利信、森繁久弥、北林谷栄らのベテランが演じ、事件関係者を松坂慶子、大竹しのぶ、永島敏行、渡瀬恒彦らの当時の若手が熱演しています。この作品の後、松坂慶子は松竹の看板女優として人気、演技力ともピークを迎え、演技の天才と言われていた大竹しのぶは助演女優賞を総なめし評価を決定的にします。永島敏行は容貌からこの後しばらくは安易な戦争大作への出演が続きますが、現代劇に戻った「遠雷」で主演男優賞を得るまで成長し、やくざ映画の準主役だった渡瀬恒彦はこの作品をきっかけに演技派へと変身します。彼らの現在の活躍の原点ともいえる名作です。
法廷シーンもあきさせないし、最後の終わり方(大竹しのぶの表情!)も秀逸
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