マイスキーのチェロは,水の上をゆっくりと進む船のようです。歌手でいえば声量豊かなバリトン歌手,かなりマッチョ感もあります。太い音色を精緻に制御するところに,わざがあるように感じました。チェロの豊かな響きが楽しめる曲ばかりで,気持ちいいです。
この「作品集」シリーズの存在は最近知ったのだが、CD2枚にギッシリ、超一流演奏家の名演佳演を詰め込み(2枚とも最大収録時間の80分以内にギリギリ収めるために曲順も工夫して)、1500円という信じられない安価で提供している姿勢はまさに尊敬に値する。そもそもこのシリーズ自体が☆5つなんかでは全然足りないくらい高評価を与えるべきなのだが…なぜこの「サン=サーンス作品集」は☆1つ減にしたのか?これはあくまで私の同シリーズ内での相対評価だが…バレンボイム指揮の有名な「オルガン付き」「死の舞踏」「サムソンとデリラ」のキリッとした演奏、このアルバムで初めて聴いた曲「ピアノ協奏曲第2番」でのパスカル・ロジェの流麗なピアノなど、演奏はいずれも素晴らしく文句のつけようがない。ただ、彼の作品の一番の代表作「動物の謝肉祭」、なぜあえて室内楽版を収録した?もちろんアルゲリッチ、クレーメル、ツィンマーマン、マイスキー、グラフェナウアーという"これでもか"と言わんばかりの名手揃い、演奏自体に不満がある訳じゃないし、ある訳がない。でも、このシリーズってこれだけある意味"安全牌"的に、誰もが安心して聴ける超一流演奏家を集めてるはずなのに、なぜこの曲だけあえてオーソドックスな管弦楽版を外したのか。シリーズ全体を見てもすごく異質な感じを受ける。しかも、このアルバムはなぜかこんなに収録時間を余してるんだから(他はほぼ2枚で160分ギリギリだが、これは130分程度)、それならせめて「動物の謝肉祭」は管弦楽版と室内楽版ともに収録してくれれば、「ムソルグスキー作品集」の「展覧会の絵」のように比較して聴けて文句なしだったのに。ユニバーサルに管弦楽版のいい演奏がなかったのかな…アルバム全体としては十分誰にでも薦められるものだけど、そこんとこだけちょっとね。
2002年2月ドイツ、ベルリンのテルデック・スタジオで録音。
妥協を知らないアーティストを束ね続けることは極めて困難なことだ。特にこのアルバムに集まった面子ほどになると『協調する』ことよりも自らの理想の演奏を常に追い求めているからだ。その『理想』が重なることは絶対にない。それが4人となればより一層難しいだろう。超傑作だった日本での1998年のショスタコーヴィチのピアノ・トリオ第2番のあと、彼等は決して再度ともに演奏をしなかった。それが復活したのが、2001年7月29日スイスのヴェルヴィエ音楽祭でのブラームスのピアノ四重奏曲第1番の演奏だった。その凄さにレコーディングの必然性を感じできあがったのがこのアルバムだ。
彼等を再度結束させたのはアルゲリッチの力によるところが大きかったようだ。前回の録音後にマイスキーはクレーメルに絶縁を申し入れていた。それを復活させたのはアルゲリッチという鎹のおかげだ。
そうは言っても妥協がないのは変わらない。この演奏では特に第3楽章に苦しんだようだ。クレーメルは気に入らず何度も何度も取り組み、彼の55才の誕生日にレコーディングを完了、祝杯をあげたらしい。そういう緊張感に満ちた素晴らしい演奏だ。
相変わらずマイスキーのドヴォルザークのチェロ協奏曲は最高だ。作品の持つ郷愁と、壮大な楽想を表現して余りある。イタリア国立交響楽団も良く答えている。客の入りが意外に悪いのは興ざめだが、(イタリアでは管弦楽コンサートはあまり人気がないのだろうか?)そんなことは関係なしに名演を聴かせる。
カップリングはストラヴィンスキーの火の鳥だが、あまり曲自体に詳しくないので演奏がいいのか悪いのかは判断しかねる。ドヴォルザークのチェロ協奏曲が好きで、映像作品を持っていないならやや高いが購入する価値は十分あるだろう。
集まった面々の素晴らしい演奏が聴けます。モーツァルトの4手のためのピアノ・ソナタはエコノムとアルゲリッチの完璧なユニゾンです。また、フレイレのCDはあまりお目にかかることがないのですが、ショパンのエチュードやスケルツォは圧巻でした。良かったです。
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