鰹節屋の次男を中心に、その父の初代、2代目の兄などの家族の姿を描いた物語。
江戸時代が時代背景な所為か、1章を読んでいたときに名前が全然覚えられず、一抹の不安を覚えたが、2章以降は物語に吸い込まれて一気に1日で読了。
舞台こそ江戸時代なんだが、青年の大人への成長譚、つまりはビルドゥングスロマンである。 だが、単に主人公だけでなく、偉大な父の影に苛まれる兄やしっかり者の母や義姉などの女性たち、狡猾な叔父などの魅力的な登場人物が重層的に描かれており、そこが物語に厚みを持たせている。良作。
商店街の町並み乾物屋の佇まい。どこを見ても何か懐かしい良い雰囲気の商店街といったこの高円寺純情商店街、そこの中程あたりに店を構える江州屋乾物店の家族達が起こすほのぼのとしたストーリー。読み終わったら商店街へふらっと行きたくなるような、かつお節が食べたくなるような、そんなほっこりとするようなお話です。
NHKのラジオ深夜便で紹介していたので読んでみました。 主人公は、近所で有名な野球が上手な小学5年生で、 生活の中心に野球と長嶋茂雄がいて、あらゆる困難に立ち向かってゆきます。 文章は、少年本人が書いているかのよう感じを受ける箇所がたくさんあります。 私も野球少年だったので共感し、涙なしには読めませんでした。 昔、野球少年だった人は、少年のころの純真な気持ちを一瞬取り戻せるかもしれませんよ。 おすすめします。
父親でもあり、夫でもあるという諸兄に、お子と一緒に読んでいただきたい一冊。実にシンプルな物語の中に、男子たるものという原点が凝縮されて表現されているように思いました。
詩誌「荒地」の詩人北村太郎と、田村隆一。 北村が田村の妻、明子と道ならぬ恋に落ちるところから、物語がはじまる。 長い年月をかけ、「ことば」で結びついた北村と田村の関係は、女性問題ひとつですぱっと切れるようなものじゃない。
この小説を読みながら、田村隆一「詩人のノート (講談社文芸文庫)」をめくってみたら、田村は北村について、こんなふうに書いていた。 「北村太郎とは因縁が深い。きわめて深い。このぶんでは、来世までつづきそうである」。
明子も巻き込んで三つ巴に絡み合い、本人たちもほどく術を知らないその複雑な関係。というより、北村と田村は、ほどく必要も感じていなかったのかもしれない。 ふたりの間で、ゆっくりと壊れてゆく明子の精神。 北村の最後の恋人。そして、驚きの結末。 最後まで息つく間もなく一気に読ませる。ねじめさんは、すごい。
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