アルバム「Fear of a Blank Planet」が、
どうにも淡白な印象が避けきれず、悶々としていたが、
次いで本作品「Nil Recurring」の発表と言うことで気にはなってはいました。
当初、日本のみの市場販売とかで、
コマーシャルな要素大だなと高を括っていましたが、
実際、アルバムを聴いてみて自分の過ちを大いに反省してしまった。
「Nil Recurring」こそ「Deadwing」の次に来たるべきPTサウンドと、
その進化に十分聴き惚れてしまった。
33分と言う短い鑑賞時間だが、紛れもないPTサウンドが濃縮されている。
確かにSteven Wilson氏の別プロジェクトNo-Man的なアプローチもありで、
「Fear of a Blank Planet」には無かった変化を楽しむ事が出来る。
彼らなら、もっと何かが出来るはずだと思った何かが本アルバムには、
濃厚に、そしてスパイシーに存在している。
そして、PTサウンドの自由度と言う点では、
遥かに本アルバムの方が高く、
それは、逆に聴き手を限定してしまうかも知れない。
それを危惧するが故に本アルバムのナンバーを、
「Fear of a Blank Planet」から彼らは分離したのだろうが、
それ故、「Nil Recurring」の作品としての個性が、
さらに浮き彫りになっていると思われます。
もちろん、PTの叙情性はこちらでも健在で、
どちらの作品を選択するかは、また聴き手の自由ではありますが、
僕としては、「Nil Recurring」がヘビーローテーションになるのは間違いない。
なお、#1:Nil Recurringでは、
Robert Fripp氏がソリストとしてギターで参加しています。
また、日本版のボーナストラックには、
#5として、Fear of a Blank Planet が挿入されています。
聴いたところ、メインアルバムと同テイクのように思われます。
一言で言うと、実に素晴らしい映像作品。
かなり細かいカット割りで各メンバーを拾ってゆくのだが、その的確さが抜群で、本当にバンドのことを理解していると唸らされる。
ちょっとしたドラムのフィルインすら実にカッコイイカットで見せてくれる。
バンドのプレイ自体も申し分なく、スタジオ盤ではクール一辺倒だった楽曲にも冷たい熱を帯びたようなテンションがヒシヒシと感じられる。
ファンのみならず、大人のモダンロック、インテリジェンスの感じられるヘヴィーロック、などお好きな方に強くお勧めしたい。
(プログレ要素は逆に期待しないほうが楽しめるかと)
現代を代表するプログレッシブ・バンドといえば、
DREAM THEATERとOPETH、そしてPORCUPINE TREEの3大バンドが
挙げられると思いますが、この中でも最も回顧的であり、
70年代〜80年代のプログレ・バンド崇拝型のサウンドを提示しているのは
PORCUPINE TREEでしょう。
本作では、特にKING CRIMSONとPINK FLOYDのエッセンス/フレバーを
感じられます。
このバンドの魅力は、「70〜80sサウンドの再現力とアレンジ力の驚異的バランス感」
だと思います。
この魅力がかつて無い程発揮されたのが、まさしく本作であり、
楽曲レベルで述べると、2・9・14曲目は彼らの真骨頂ではないでしょうか。
また、「カルト」、「死」というダーク且つ負のキーワードを軸にした世界観も
本作の重要な魅力です。
私は、何故か本作を聞く度に心にモヤモヤした感情が芽生え、どこかやるせなく、
生きることに怠惰感を感じ、最近は専ら聞くことに躊躇をするようになりました。
精神的影響をうけるサウンドは、これまた70〜80sのプログレ・バンド
の魅力であり、現代に欠如した要素の様な気がします(あくまでも私の感性です)。
因みに、ボートラは結構不評の様ですが、1曲目は本編に入っていても
違和感も全く無いであろう良曲だと思います。
とりわけ、従来のファンの中でも好みが分かれるであろう
「クセ」の強い作品だと思います。
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