既存の笑いの解体と再構築、デュシャンかケージかはたまたタモリか。中古に無茶苦茶な値段がついていて手が出ない、1〜3のBOXセットでも出ないかなぁ…嗚呼。
レコードと比較して「町の民謡教室」からごく一部の音が削られている分マイナス。
森田一義ことタモリが出演した異色のロードムービーです。1982年上映ということですから、ちょうど「笑っていいとも」がスタートしたころですね。監督は写真家・浅井慎平で制作はATG。
ストーリーはタモリ演じる中年男がふと知り合った少女となぜだか旅に出ることで、今度は誘拐犯とされてしまうというちょっとした不条理性を含んだロードムービーものです。当時のタモリはまだアングラ芸人にイメージが強く、いまのような大御所ではありませんでした。そのタモリと写真家・浅井慎平が組むということでかなりの期待感を抱きますが、いま素の目で見ると、特別に面白いというわけではありません。特に浅井氏が手掛ける演出は素人目で見ても素晴らしいというわけでもなく、また写真家らしい映像美というのもあまり期待しないほうがいいと思います。
共演者は豪華です。故・淀川長治、故・岡本喜八、故・小松方正、故・伊丹十三、故・川谷拓三などのいまは亡き懐かしい顔ぶれから、オスギ、吉行和子、宮本信子、桃井かおり、竹下景子、内藤陳、山下洋輔、高見恭子、藤田弓子など知人・友人などが支えています。しかし、この豪華キャストが映画のナカミに生かされていないのが残念です。
学生時代、休日になると私レビュアーは
原付バイクに乗って都心によく出掛けた。
副都心の繁華街には目もくれず、
赤坂、麻布、六本木の坂の街並みを廻るためだ。
流石は帝都東京だと唸ったものだった。
「この地形のこの場所に道を通したのは何故だ」と、
思いを巡らすとか、坂の下から高台を見上げ、
「あのような地形には名所旧跡があるはずだ」と検討をつけ、
実際にあると、古の人も俺も考えることは同じだ。くっくっく。
などとやっているとあっという間に時間が過ぎたものだった。
また何故かネコが多かったのが妙に記憶に残る。
わが故郷の野良ネコたちに比べて、麻布ネコ、六本木ネコは
なんとなく都会的に格好良く見えるから不思議だ。
一度彼女を誘って散策してみようかとも思ったが
まるで興味がなさそうなのでやめた。
「坂道登って下って何が楽しいの。汗かくのイヤ」
と言われそうだったし(笑)
しかしこの本を読み、ハタと気づいた。
そうか桜坂だ!このテがあったかと。
満開の桜に、福山雅治の桜坂ならノリノリに違いない。
それでカフェデスパシオで足を休めて、
ル・ヴェルデュリエでランチすると。
これで少しでも坂道ワールドに
興味を持ってくれれば勿怪の幸いだ。
ところでタモリというひとは
何処か底知れぬ恐ろしさがあるという印象をもつ。
まるで18世紀フランスの外交官タレーランを芸能人
にしたような人物だと、個人的には密かに思っている。
積極的に知人になろうとは思えないタイプの人かもしれないが、
強烈な持ち味は見ていて面白い。何よりもうならされる。
本書も、見た目は柔らかいが、よく読みこむと
「精神的に貴族趣味」の塊のような本だと気づかされる。
タモリ氏はよく言う。
「地名はその土地の記憶だよね」と。
地名に記憶が刻まれているなら、
名坂にもその土地の記憶が刻まれているに違いない。
由来をひも解き、実際に歩けば、先人たちの思いが甦る。
人々の営みや、情景を映す由緒あるこれら名坂もまた、
かけがえのない歴史の遺産だと思う。
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