愛する人を失くしたとき、人は一体どうすれば良いのだろうか？ 時に、死別は人から生きる意欲を失わせる。 あなたのいないこの世界に、一体何の意味があるのだろう？ 私の人生は、もはや余生に過ぎないのではないのか？ 本当に、私に生きている価値などあるのだろうか？ それでも、一条真也氏は、あなたに生きて幸福になって欲しいと語りかける。 「わたしは、さまざまな葬儀に毎日のように立ち会っていますが、残された遺族に何より必要なのが悲しみを癒すグリーフワークであり、『死は決して不幸な出来事ではない』という物語だと確信しています。」（表紙カバー見返し） 一条氏は、「グリーフワーク」の核心を「葬儀」に見る。 なぜならば、「あなたの愛する人が亡くなるということは、あなたの住むこの世界の一部が欠けるということ」だが、「葬儀」とは、「儀式によって悲しみの時間を一時的に分断し、物語の癒しによって、不完全な世界を完全な状態に戻すこと」だからである。 死別の苦しみは、誰もを人嫌いにさせ、悲嘆と愛惜の深淵に引きこもらせてしまう。 しかし、そのまま放っておくと、その人は本当に人前に出られなくなり、誰とも会えなくなってしまう。 それに対し、「葬儀」は、「いかに悲しみのどん底にあろうとも、その人を人前に連れ出し」、「引きこもろうとする強い力を、さらに強い力で引っ張り出す」。 つまり、「葬儀の席では、参列者に挨拶をしたり、お礼の言葉を述べなければ」ならないので、「それが残された人を『この世』に引き戻す大きな力となる」。 さらに、「葬儀」の「物語」は、現実の昇華を助ける。 従来、日本では、その物語は、仏教の「成仏」という信仰に多く支えられてきた。 これに加え、一条氏は、古今東西の厖大な知見を引用し、特定の宗教とは無関係に、霊魂の不滅を信じても良いのではないだろうかと提案する。 そして、「おだやかな悲しみを抱きつつも、亡くなられた人の分まで生きていくという気持ち」になることこそ、「あなたの亡くした、愛する人がもっとも願っていることなのです」と確言する。 本書には、亡くなられた人に自分の気持ちを届けるために伝えられてきた、様々な具体的な知識も紹介されている。 悲しみの淵に囚われそうになったとき、それでもこのままでは何かが良くないと思ったとき、ぜひ本書を手に取って一読して欲しい。 ロマンティック・デス―月を見よ、死を想え (幻冬舎文庫) また会えるから 涙は世界で一番小さな海―「幸福」と「死」を考える、大人の童話の読み方 葬式は必要! (双葉新書) ご先祖さまとのつきあい方 (双葉新書（9）)
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