![]() 墨東綺譚 [DVD] |
遊郭に
「世の中の真実がある」というスタンスで映画が進行しますが 「遊郭に身を落とした人間は結局は幸せになれない」という結末を持ってくるあたり、見ていて少し辛い。ここを最初と最後に出てくるストーリーテラー役の「作家」にうまく語らせているところはうまい。 この映画のよさは、そんなところではなく、何気ないせりふが、かなり粋だったり、男と女、はいつでもどこでもそんなに変わらないということを語っている点です。 山本富士子さんの、引っ付くくらいの、男にまとわりつく愛情の表現はすごく良い。それが一番の見所です。あれくらい素直な愛情表現ができるといいねえ。 |
![]() 墨東綺譚 [DVD] |
永井荷風の小説と日記を巧妙に時系列順に配置して映画化した逸品、 世紀末以降、定着したともいえる多くの荷風ファンは必見の作品です、 もう二度と映画化できない題材かもしれないともおもい以下幾つか残念だった点をあげる、 まず、撮影と照明が不安定、特に屋内シーンでの照明の明るさがとても気になる、せっかく墨田ユキという脱ぎっぷりの良い美人を主役に添えながらせっかくの彼女の美貌も綺麗な姿態も明るすぎる照明が情緒を消しているシーンが多い、大正・昭和のはだか電球一つの営みの隠微さをもっと意識してほしかった、 主演が津川雅彦であることに誰も異論はないと思うが、津川は得がたい俳優ではあるが、あまりナレーションが上手ではない、よって特にクライマックスである東京大空襲シーンにおける例えようもない切なさが表現されていないと感じた、本作と同時期に新藤監督はNHKで佐藤慶主演で「断腸亭」日記のドキュメント・ドラマ(45分2回)を製作・放映しており、当作での佐藤慶のナレーションの素晴らしさを知っているものには津川の語りは物足りないこと甚だしい、できるならば語りだけを佐藤慶にした再編集版を期待したい、 ロケーション多様のわりには引きの映像が少なく(昔風の景色の部分のみをカメラで切取る映像が多いため)作品全体に窮屈感がある、現在のようにCG処理可能であれば解消できたともおもうが、 実際に古着をつかったと思える和服は実に良し、しかし背広はダメだ、最近の「スパイ・ゾルゲ」もそうだったが現在の生地・仕立て技術では昔風の背広を作るのは逆に難しいことが良く分かる、現在が良くなりすぎているのだ、ただしスパイ・ゾルゲのような安っぽさはまったく感じない、 できれば阿部寛がもう少々くたびれた頃、ぜひ再映画化を期待したい(阿部寛は顔も姿も現役俳優中で最も荷風に似ているとおもう)、 |
![]() 〓東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫) |
例に漏れず、書籍のPDF化に励んでいると、こんな本が見つかった。荷風もまさかパソコンの画面上で読まれるとは思ってもいなかっただろう。大掃除をしている時に、畳の下に古新聞があり、その記事に目が行って、しばし手を休めているといった風情である。
この本に出てくる言葉で気がつくのは、ドブの匂い、蚊音、西日などであるが、いずれにしても死語の類か。大震災で江戸の風情はなくなり、新興国家としての日本の隠れた部分を表象している文学とでも言えようか。それにしても、日本とは、かなり饐えた国だったのだ納得させられる本ではある。 |
![]() 摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫) |
大正から昭和の永井荷風の生活史である。
昭和の初期から、軍事色が強まって行く中、庶民が何も知らされず戦争に引き込まれて行く生活の実態を著している貴重な記録である。 |
![]() 摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫) |
戦中の暗い時世のなかで荷風の反軍国・反官の舌鋒は凄みを増して冴えわたり、挿入される街のうわさや風聞録のたぐいがコメディ・リリーフ的な役割を担い、当世女性流行の服飾や髪型のヘタウマ風スケッチに荷風の視力の確かさが見てとれる。内容的には昭和16年のものがおもしろい。最晩年の荷風はほぼ毎日浅草銀座へ通い続けるが、その行動は八十歳間近の老人とは思えない。ただ、興味関心は薄らいでいくばかりで生活がハンで押したように固定化単純化されていき、内容も無味乾燥となる。最後の年(昭和34年)の日記が無常である。突如体調を壊し、以後、病臥の日々が続く2ヶ月間に日記は次第に短くなり、とうとう月日と天候のみが記されていく。「四月二十九日 祭日 陰」。さながら、ロウソクのともし火がふっと消えていくその瞬間に立ち会ったような感慨深い余韻があとに残る。 |
2010-05-04の作曲&録音「永井荷風 すみだ川」
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