
朝鮮銀行―ある円通貨圏の興亡 (PHP新書)
本書は朝鮮銀行の流れを汲む日本債券信用銀行出身の
在野研究者によって書かれた歴史書である。
第一次世界大戦・第二次世界大戦と日本は武力のみならず
通貨「円」をもってして経済戦争を戦っていた。
その先兵となっていたのがこの朝鮮銀行であり
横浜正金銀行であった、と著者は言う。
派手な地上戦や艦隊戦は戦史として語り継がれ、
記録も数多く残っているが、
軍事費送金・軍費調達にかかわる金融工作については
当時極秘とされ外部に漏れることは無かった。
また戦後の混乱により資料も焼失・散逸し、
その全体像は未だ謎に包まれている。
しかし残された資料を丹念に読み解いていく作業の末
書き上げられた本書を始めとしたこの著者の作品は
どれも知られざるエピソードの驚きに満ちている。
この珠玉の逸話たちを、もう少しドラマチックに
描いても良いのでは、と感じるのは私だけであろうか。