逆境を越えてゆく者へ
新渡戸稲造氏の「修養」「自警」から、逆境に応対する心構えを説いた部分を抜粋し編集した一冊となっています。
「武士道」と同様、新渡戸氏の見識の高さがうかがえ、わかりやすく納得性が高い文章です。
内容については、逆境に際したときの心構えや、その時のための心の準備として「決心を継続する」「四つの力(金銭、体力、知識、徳)を蓄える」ことについて説いています。
個人的には、納得、共感することが多く、読んでいて面白い本でした。
しかしながら、2011年3月11日に被災された方、そして困難に立ち向かわざるを得ない方々に対しての指針となることを期待して出版されていることには違和感がありました。
新渡戸氏が本書で語っている「逆境」は、概ね自分の心持から生じている事が多く、気の持ち方や考え方・習慣を改める事で「逆境」では無くなることが多いものとして語られています。そのため、先にも述べたように個人的には共感する部分があるのですが、未曾有の天災に遭遇した人々に「自分の気持ちの持ち方が、逆境を招いている」ということは言えないのでは?と感じてしまいます。
もちろん大きな意味ではそうだとも言えますが、それはあまりにも厳しいことだと思います。
そういった出版の意図には違和感はありつつも、書いてある内容については、先にも述べたとおり新渡戸氏の高い見識に裏付けられた思考が綴られていますので、読んで損することは無いと思います。
「いまちょっとうまく行かないことが多くてめげる」という方には、参考になることが多いのではないでしょうか。
お薦めします。
聖書を読んだサムライたち もうひとつの幕末維新史
幕末のヒーローたちが,聖書を読んでいたあるいはキリスト教の洗礼までうけていたというお話といってしまえばそれまでですが、この精神が明治維新期の日本を支えたことは驚きでした。さらに「西郷隆盛の敬天愛人」について常日頃聖書の愛の記述に発想が似ていると思っていたこともあり、今回そのわけが解明され、眼から鱗が落ちたように眼の前が開けた気がしました。お勧めの一冊です。聖書を読んだサムライたち もうひとつの幕末維新史