とあるイラン人女性の視点から見たイラン社会と戦争などの自伝的コミックの映画版。
映画では時間の関係上省かれている部分がかなりありますので、興味のある方は原作とセットでご覧になることをおすすめします。
もちろん映画だけでも話がつながらないわけではないのですが…
本編にも出てきますが、この作者は当時国民の半数は字が読めない国で育ったにも関わらず、幼少期から様々な知識を吸収する機会にめぐまれ、両親も政府のプロパガンダにも操作されず、国営放送はとりあえず疑ってかかる人たち。
それゆえ社会を皮肉ったり、冷静にものを見ることができるのでしょう。
決して一般的なイラン人ではないと思います。
しかしストーリー展開はおもしろい。
かなりヘビーな内容ですが、白黒のイラストで展開していくので目をそらさず見ることができます。
何かのインタビューで作者が語っていた、
「実写だとエキゾチック、酷い場合は第三世界の話で終わってしまうが、単純なイラストにすることによって誰にでも関わりあるものにできる」
という狙いは当たっているようです。
私がこの本を手にしたのはテレビのニュースでアルカイーダやら シーア派やら暴動、テロと言った言葉に疑問を感じたからでした。 テレビでそんな言葉を言われても、なんで争ってるかなんて どの番組でも説明してくれなくて、だけどイランやイラクでは戦争してて、 おかしな話だなと思ってた時にこの本に出会いました。 内容的には、そんな重苦しい話ばかりでは、ありません。 マルジの周りでベール着用が始まり、戦争が始まりますが 彼女は読者を笑わせてくれます。 この本を手に取ったとき漫画だと思って軽視される方も居られるかも しれませんが、世界では、こんな事がおきてるととゆうことを、 分かりやすく色んな人に教えてくれる”漫画”だと思います。
イスラムの女性ならではの悩みを抱えながらも
(だからぼくらよりは、自由に行動する場合のハードルが高くなってるけど)、
恋愛したり、結婚したり、離婚したり、不倫したり、男に愛想尽かしたり、
お金に目がくらんだり、みんなそれぞれ、人生を楽しんでいます。
※この本の登場人物は、お金持ちの女性ばかりだけど。
サトラピさんが書いた『ペルセポリス』もとてもおもしろかったけど、
この本も、あっという間に読んでしまいました。
こういう本をたくさん読んで、イスラムのことをちゃんと知っていきたいと思います。
イラン出身、フランス在住の絵本作家の自伝である。 ハードカバー版だと2冊になるのだが、このペーパーバックは1冊で完結する。 なので装丁は「それなり」ということを覚悟して購入した。
日本語版だと、マンガのようにあっさり読んでしまうのであえて英語版を選んだ。 これが功を奏し、日本語版の表現よりも濃く感じるので、じっくりと内容を把握しながら読んだ。 (日本語版はAmazonの「なかみ検索」で見た印象だけでの印象。ただ英語版だと字が細かいので目の疲れには注意。)
セクションが子供時代の話で10話、西側諸国に留学ののち故郷に帰った時の話で9話、合計19話の構成になっている。 このアニメーション映画を以前見たことがあり内容は把握しているのだが、グラフィックノベル版はアニメ版にはないエピソードもあるので、アニメ版とは別物のような新鮮な気持ちで楽しめた。
イランは長い歴史から見ても、専制政治と服従の繰り返しなのに豊かで独自の文化を守ってきた。 この本では白色革命からイラン革命、イランイラク戦争と激動の時代の中で、筆者率いる登場人物の不安と葛藤を描いている。
この作品の他のレビューにも述べられるのが、筆者はカージャール朝国王の血をひき、上流階級の家庭で育ったことである。 普通の人間とは違い、金もあり環境が整った人のエピソードだ、と考える向きもあるだろう。 しかし今現在筆者は数か国語を話せていて、絵本作家とアニメーション監督の肩書を持つのは、この本に書かれている以降の人生も努力を惜しまない人だと推察される。 恵まれていながらも筆者は更に努力して知識を吸収し、自由に自己表現ができる世界で立派に生きてほしい、という気高い家族のバックアップもあるのだと思う。 西側諸国に移住すればイランで過ごしてきた生活が一転する、と筆者の父親はここで述べているので、恵まれているとはいえ娘一人をオーストリア留学に出したのも重大事で、両親は抑圧的な国に残り娘に希望を託したのだろう。
不安や葛藤と戦う姿は社会情勢が違えども、社会との違和感を感じる面はなんら私たち日本人と変わりはない。 だが、抑圧された社会の中で生きるイラン人の強さやユーモアを忘れないところも教訓にしたい。
また「一部の過激論者の行動でイランをひとくくりにして判断されてはいけない」と筆者は冒頭のイントロダクションで語っている。 そんな筆者の想いが詰まっている1冊である。
これを読んだら、身の回りが皆、魔よけに見えてきます。タイトルだけだと何だかマニアックな本だと思いましたが、ユダヤの星マークも、日本でも使われているのを知ってびっくりしました。そのほ鎧かぶとの前垂れに書いてある「前」という字が「魔除けのかたち」の9本の縦横棒のデフォルメだったりと、人間、心配なことがあると、こっそり「魔除けのかたち」を忍ばせていて、それは、日本人だけでなく、他の国の人も同じものを使っていたというのは奥が深いと関心しました。
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