「日本中枢の崩壊」(2011年)古賀茂明を読むとあと数年の猶予があるように思われるが、本書に来ると「傾き続けてこの先どこまで行っても浮かぶ目無し」と考え改める。
本書は内部告発の一種と言われるだろうが、告発というのか国民不在の利益闘争の茶番山盛り状態では告発の域を超えている。
原発を監督する部門が同じ役所の下にあった。一旦事が起きると糊塗されていたシステムがモグラ叩きに出る。こういった人災の被害者となる国民の方は堪らない。税を被り、放射能まで被る。天下りを一掃する言うから期待した政党が、直ちに宗旨替えの腰砕けとなる程度の国には良く似合うというべきか。
本書を見ても官僚制度の内部からの改革は全く期待できない。というより、一義的に改革とは自己反映のために肥大してきた独法などを切り捨てるに過ぎない。
今後数年で国の借金が国民の金融資産を上回り、2011年のギリシャのような状況が視野に入るまで5年か?10年も持つまい。その時ようやく山県有朋以来の大改革とマスコミが騒ぐには時期を逸している。その期に及んで年金も失っているだろうけど、日本人は改革と言うんだろうか。
「われら富士山」お山の大将で、同じ学校の先輩後輩がリレーするシステムを優秀だからなんて社会が続く異常がとうとう崩壊する事態となるところ。
本書を読んでスゴイ!と感じる部分もあるが、少しピントズレというところも感じる。サブタイトルに「保守の底力が日本を一流にする」とあるが、本書からそういう部分は強烈には感じられない。
なんとなく仲良し四人組の座談会のようである。
民主党のアマチュア政治を見るにみかねてじゃないの? 俺は彼の考えを支持するね。 批判する前にちゃんと読もうや
政治家・与謝野薫氏が4つのがんと、3度の再発という難局に、「治るんだと信じて治療を受けてきた」という姿勢に正直驚き、また感動をした。出来るだけ冷静に自分のがんと向き合い、ごく普通に暮らしてきたと、平然として述懐する。(1)与謝野氏は39歳の1977年に「悪性リンパ腫」。右足の付け根にゴリゴリを感じた。 (2)1987年には猛烈な腹部の激痛があり、「腸間膜に転移」。1993年に悪性リンパ腫は完治した。 (3)2000年には英国で便秘と血液が付着、帰国して大腸内視鏡検査で「直腸がん」発見。直腸がんは4.5x3.0cm、ステージII、リンパ節転移はなし。人工肛門は作らずに済んだ。1993年に鼠径部と腸間膜に念の為放射線を照射している。 (4)2001年に小水の中に小さな血の塊が出た。PSAは6.63、生検は8本中4本に出て、グリーソンスコアは4+3=7で、「前立腺がん」。手術は保留し、ホルモン療法6カ月の後に三次元放射線照射を33回行った。 (5)2006年には「下咽頭に扁平上皮がん」4x4cm。飲み込み時の痛み、引っかかるような感覚、血痰等が自覚症状だった由。この手術は、首のリンパ節切除、喉のがん切除、手首の組織で喉の再建、足から腕への皮膚移植という4段構えとなった。 (6)2002年前立腺ガン治療の1年後から、2010年まで長期間、膀胱からの出血。しかも時に血の塊として出て来る。凝血塊が膀胱に詰まる閉尿が最も怖い。結局2回の「経尿道的膀胱止血術」を行った。特に2009年8月17日に手術して、翌18日は衆院選公示日で宣伝カーに乗っていた。これら治療は全て国立がんセンター中央病院で、腫瘍内科、消化器外科、泌尿器科、放射線治療科、頭頸部腫瘍科に渡る。声帯の上部の披裂の切除・再建は同センター東病院形成再建外科の櫻庭実医師が執刀した。本書では青木直美氏が、与謝野氏の各科担当医にインタビューし、内容を詳述しており非常に参考になる。本書は同様に壮絶な関原健夫氏の「がん六回 人生全快」を思い出させる。関原氏も与謝野氏も大腸の主治医は国立がんセンターの森谷医師だ。ところで与謝野氏は鼠径部・腸間膜・前立腺への放射線治療の影響で膀胱が特にQOL上困難を来したようで、その辛さは筆舌に尽くし難かったろう。上記(5)の喉の再建には、手首辺りの組織を採取するが、皮下脂肪、血管2本、皮膚の神経も持った状態での移植だから凄い。
中南米危機は日本人にはやや遠い世界のことにも感じられなくもないが、アジア危機や日本の金融危機について、共通の構造を描いているので非常に論旨が明快で読みやすい。自身、難しいことはいくらでも難しく書けるがと書いているように、こういう語り口で平易に理解させる能力は単なる学者にとどまらず、新聞のコラムニスト、あるいはブロガーとして読者を常に意識しつつ文章力を磨いてきた賜物であろう。ベビーシッター協同組合の例えはわかり易いかどうか微妙だが、日本に同情的なのは親近感が持てる。ただ、調整インフレ論はそんなものかと疑問に感じないでもない。
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