ベトナム戦争で負傷し性的不能者となった犯罪心理学者Herbert Lyutak(Mickey Hargitay)は或る晩ナイト・クラブで知り合った少女の太腿に興奮した余り彼女を川岸で絞殺してしまう。折りしも地元では猟奇的連続暴行殺人事件が発生しており、彼と其の妻にして未だ処女のMarzia(Rita Calderoni)は問題の事件に巻き込まれて・・・。其の心的外傷故に倒錯的に精神を病んでいる性的不能者と其の周りに次々と現れる同じく倒錯的な(しかも病的に脱ぎっぷりの良い)レズビアンたちが複合的に織り成す精神病理世界を描いた1972年の問題作です。今回DVD化されたのは原語(イタリア語)音声の所謂国際版ですが、実はこの版にはUS版の冒頭シーン(ベトナムで負傷した主人公が女性衛生兵の姿を基に倒錯的空想を作り上げていくシーン)と終盤シーン(其の空想の「現実化」の要素としての回想シーン)が完全に欠落している為に当該国際版のみを見ても主人公の倒錯の因果関係が皆目分からないので、今回の日本盤DVDは(其の高画質を考慮しても)両方の版を収録している北米盤DVDに比べると遥かに劣るものだと言わざるを得ません。
イ・ムジチによる明るい演奏にのせて奏でられるオーボエがまるで肉声で 唱っているかのように聴こえました。
全体の曲目を眺めますと、イタリア出身の作曲家とバロック時代の曲目から選曲されているのが多いのと、オーボエ協奏曲から取ったものが多いのに気がつきました。少し物悲しいオーボエの音色とアダージョのイメージが合うのでしょうか。アルビノーニやマルチェルロの曲は有名ですから、映画音楽などにも使われています。
ハチャトゥリアン作曲の「スパルタカスとフリージアのアダージョ」は良い曲で気に入りました。幻想的で優雅な曲ですし、ジェームズ・ゴールウェイの奏でるフルートの音色の美しいこと。このアルバムの愁眉の曲でしょう。
バーバーの「弦楽のためのアダージョ」の緊張感溢れる荘厳な調べはまた格別で、サミュエル・バーバー畢竟の名曲です。マーラーの「交響曲第5番~アダージェット」もヴィスコンティ監督作品「ベニスに死す」に用いられてから特に愛されるようになりました。官能的な響きは、他の曲にない趣を感じます。
「アダージョ」に収録されている曲を一通り聴きますと、心が安らぎました。
忙しい現代人にとってこのような「アダージョ」の語源の「くつろいで」という時間が必要なのでしょうね。
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