本書は幕末・明治に9代目團十郎とともに人々を熱狂させた5代目菊五郎がその最晩年に、自らを語った自伝である。私がかつて読んだ自伝の中では、その破天荒さにおいては、ほぼ彼と近い時期に生きた、勝海舟の父の勝小吉の自伝「夢酔独言」と並ぶ面白さである。 彼の痛快無比な経験が、まるで芝居を見るかのような生き生きとした江戸弁の描写で語られている。中でも、鉄砲玉の飛び交う上野の彰義隊の戦場に遭遇してしまった時の彼の機知に富んだ行動は、緊迫した状況であるのに何だかおかしく、そして「さすが役者!」とも思えて笑ってしまう。 また、歌舞伎愛好家にとっても彼の緻密で計算された舞台がその日常の生活の中でどのようにして生まれたのかが分かり、芸談としても楽しめる。粋でいなせな彼の写真もふんだんに掲載されているので、錦絵でしか見られないその舞台姿も想像できるだろう。 科学技術等がが進歩して近代化した今日、現代人がもはや経験しないことにより失ってしまった大切な何かを彼とその人生は教えてくれる気がする。
歌舞伎役者の系譜は襲名披露の時、どういう順番に「出世魚」するんだ?といまいち飲み込めていなかったのですが、この本にはそういった「家」の系図がわかりやすく書かれていてよいです。 現在活躍している、若手と有名な役者さんについてプロフィール得意な演目など紹介されています。コンパクトにまとめられていて初心者は重宝するでしょう。 ただ残念なのは、あきらかに女性向けの本の作り。表紙紙が桜色では男性は手を出しづらいのでは?内容も女性を意識して書かれている傾向にあります。 ただ、歌舞伎座(私はいつも一幕見)のお客さんを見ると圧倒的にマダムが多いんですね。「成駒屋!」と声をかける芸に厳しいおじさん達が3階席や一幕見には多いですけれど。 男性のファン層をつくるような、こういったてごろな解説本があるといいですね。だから星4つ。 とりあえず、女の子がこの本をもって、彼氏をさそってデートなどいかがでしょうか。
大正11(1922)年に録音された六代目尾上菊五郎(1885-1949)のSP盤がCDになりました。
ラッパ吹込みですから電気吹込みの盤に比べると少々音は悪いのですが、六代目菊五郎 や六代目大谷友右衛門の鮮やかな口跡はノイズの奥からもよく分かり、その素晴らしさに 圧倒されます。
解説書には全台詞書き起し、全配役掲載(一部不詳分あり)のほか、河竹登志夫氏による 六代目の思い出語りもあり大変充実しています。
46話で丹波哲郎の千坂兵部の追い出しに成功した市川中車の吉良上野介だったが、亡くなったため弟の小太夫が47話より代役を… 中車の上野介は憎々しくも弱々しさがあり好演していた。討ち入りを目前にして上野介役が変わったのは…大作だっただけに誠に残念。
画質・音声の劣化、ぞんざいな編集は否めませんが、それが気にならなければ、大河ドラマの貴重な映像資料として十分楽しめます。
白黒映像ながら、合戦シーンはとても良く出来ています。屋島の戦いで、コントを彷彿とさせる平景清と美尾屋十郎の一騎打ちや、壇ノ浦の戦いでの、主役を食う平教経の戦いぶりや、平知盛の最後は、後年の大河ドラマ『義経』のような媚びた所はなく、役者の気迫が伝わってきます。
ラストの義経主従の大殺陣も見物で、弁慶の立ち往生が霞むくらい壮絶です。平泉の炎上や西国へ向かう一行を阻む平家の怨霊登場するシーンでチャチ(笑)な特撮と合成を楽しめます。
頼朝も冷徹なリーダーではありましたが、個人として、正直すぎる弟・義経を心配する兄でした。
NHK大河ドラマと言うよりは少年時代活劇の要素が強いですが、それなら後年の『義経』はバラエティの延長でしかありません。
|