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オープン・セサミ
彼の、少し強引だが、荒々しく一気に読ませる筆の力はいつもながら素晴らしい。
さて、とはいいながら彼らしさの象徴となりつつあった、唐突だがリズミカルな暴力とセックス描写。
それがこの短編集ではすっかり鳴りをひそめている。
というか、序盤の作品には、そういう「らしい」展開が観られつつも、後半の3編、文章のリズムは変調し、
あたかも、その前の作品にあるリレーで走った女性がふっ切ったように、
不思議な、そして深みのある作品へと続いていく。

これまでの彼の作品世界の至る一つの峰が、最後の「さよならは一度だけ」だ。
正直、展開はすぐに読めてしまう。だが、この作品の凄みはそこにはない。
オウジと呼ばれる作中人物、彼自身もまた、筋書きはわかっている。
伝説の真実も、すべての話の結末も。
彼自身のトップシークレットを明かしはしない。けれども、彼は心の奥底にある秘密を、少年たちに明かす。
まさに、吐くのだ。

真実を知ることではなく、真実を吐きだすこと。あるいは吐かないこと。
たやすくすべきではないが、とても大事なこと。そこの感慨は実に深い。

 

健康一年生 食の情報を先生といっしょに考えよう
 情報が氾濫している現代社会において、消費者はしばしばメディアに振り回される。

 「身体によいもの」を求める人々は、いかにも効きそうなフレーズが繰り返しCMとして放映されれば興味を持つし、テレビ番組で特定食品が有名人によって紹介されれば思わず購入してしまう。消費者の「無知」も責められるべきだが、うまくつけ入る企業に対して「儲かればそれでいいのか?」と疑問を感じてきたし、そういう食品の開発研究をしている人の倫理観にも不信を抱いてきた。

 この本を読んでみて、やっぱり「選んで購入する」「納得して口に入れる」ためには基本的な正しい知識と判断力を身につけることが不可欠であると感じた。至極当然の結論で、分かりきったことではあるけれど、結局、それしかないんですね。
 それらしき研究者の「推薦のことば」や、キャッチコピーに踊らされず、一度立ち止まって、その「情報」の意味することを自分で考えてみなければならないってこと。

 養老孟司氏は「データ主義」という文章(『ぼちぼち結論』中公新書1919)の中で、「データに基づいた議論だから、確実な議論だと信じるのは悪しき科学主義である」「ある目的に沿ってデータを出したら、強いバイアスがかかるに決まっている」と述べているが、我々は、その手の商品の宣伝に載っている、専門家の実験成果であるグラフや数値を見ると、自分で確かめる術がないだけに、信憑性があるように思ってしまう。そんな時にこの本の主張「情報と真実の間に大きなギャップがある」を思い出そう!これは単に「食の情報」だけにとどまらない真理だ。

 本の中身は至って平易。挿絵や表もあって、大学生から毎日の食卓をあずかる主婦の方まで、楽しく読める。食品関係だけでなく消費者教育に関わる人にもお勧め。通勤・通学途上の読書にも向いていると思う。

 注文をつけるとすると、「復習編」にある「サプリメントはどれだけ摂れば効くのですか?」「健康食品で血液がサラサラになるってホントですか?」といったQ&A、もっとたくさん載せて欲しかった。「普通の人」である「一年生」には、素朴な疑問がたくさんあるのだから。

 読み終えると「二年生」に進級ということらしいが、この先はどうなるのだろう。現状に問題があることはよくわかったけど、『で、これからどうすればいいの』という若干の戸惑いを覚える。この分野、恐らく「六年生」では卒業できないほどの深遠な世界なのだろうが…。
 また著者たる「良心ある研究者」が、社会の悪習に牙を剥き、バッサバッサと斬っていくさまを見てみたかったような気もする。

 『健康二年生』、期待しています。

 

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