早川義夫 恥ずかしい僕の人生
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この世で一番キレイなもの

エレファントカシマシの『東京の空』がリリースされたのが94年5月。この作品を最後に、カシマシは平平凡凡たるJ-POPとやらに成り下がり魅力を完全に失った。一方において、同年10月に早川義夫は20年以上の沈黙を破りこのとてつもない傑作をリリース。翌年『ひまわりの花』を発表しその底知れぬ凄まじさを知らしめたわけである。どのような世界でもそうであろうが、メッキは何時か剥げるものであり、逆に本質は何をしていようが変化しない/出来ないものであり、何時か吹上げて来る/来ざるを得なくなるもの、つまりは才能ある者にとってはコントロール不能なものなのかもしれない。

音楽産業で糧を得ているわけではなくただただ素晴らしい作品との出会いのみを期待する音楽愛好家にとっては、出て来た作品こ!そ!が全てであり、音楽家を応援しようだのサポートしようだの(だから私はサッカーの「サポーター」という何か履き違えたような言葉は嫌いである)、ましてや育てようなどという気は起きないのではないか。特にロックの場合、「育てたりコントロール出来たりする程度の才能・個性・狂気などというもの」は、「つまるところ何ら表現せざるを得ないものを持ち合わせていなかった」ということなのであろう。

新生早川義夫の作品群の前では、現在の日本のロックは完全に色褪せてしまう。格が話にならないほど違うのだ。そして、「こういう生き方しか出来なかった」というようなロックの宿命性を持ち合わせた人間の存在としての凄みに圧倒されるのみである。

早川にとってそれが幸福であるのか否かは分からないが、!聞!き手にとってはまさに奇跡の作品としか言いようがない。以上



ラブ・ゼネレーション

たしかにとげのある表現もある。矛盾だと思うこともある。しかし、何度も読んでしまうのである。はじめて読んだのは早川さんが復帰して間もない頃お茶の水の店頭で文庫本で。今は新装本で。正しいかどうかなんて私にはわからないが限りなく素敵なのだ。早川さんが本当は何を伝えたいか知りたくて何度も読んでしまう。遠藤周作さんの「私が捨てた女」を読んだときもそうだった。何十回と読んだ。「ラブジェネレーション」何度読み返しているだろうか?本を買う意味とはここにあると思う。そうでなければ、図書館で読めばいい。早川さんはいつも唄っている。本の中でも。CDを買ったような気分だ。



ひまわりの花

衝撃的な再デヴュー第二作であるこの作品は、第一作からちょうど一年後にリリースされた。既に書いたが、第三作において早川はアコースティックな傾向を強め始める。従って、本作はバンド編成での早川の一つの完成形であると言えよう。

プロデュースは佐久間正英であり、ギターやベースなどで演奏にも参加している。バックを固めているのは、そうる透(Dr.)、梅津和時(Sax)、スティング宮本(B.)、坂下秀実(Key.)といったテクニシャン達である。早川はヴォーカルとピアノを担当しており、再デビュー後の彼の特徴である独特のドスの効いたヴォーカルスタイルもより一層迫力を増し、非常に完成度の高いアルバムに仕上がっている。

曲に関して簡単に述べると、1と11、12はハイポジというバンドの作曲によるもの。2、6、8はジャックスの曲のセルフカヴァー。それ以外は新曲である(3はジャックスの曲かもしれない。誰か知っていたら教えて頂きたい)。最初から終わりまで全く無駄のない完璧と言って良い作品であるが、ジャックスのセルフカヴァーが実に素晴らしい。

早川にとっては、音楽は職業ではなく、生きることそのものなのであろう。かつてエレファント・カシマシの宮本がそうであったように、「これしか出来ない」「しかしこれをやらずにはおれない」という連中による作品。そのようなものにはなかなか出会えないものであるが、出会った時にその凄さに圧倒されることが出来なければ、不幸以外のなにものでもないであろう。こういう作品が片隅に追いやられ、粗製乱造の聴くに耐えない音楽が幅をきかせているのは不幸なことであると思う次第だ。

ところで、SONYに要望がある。かつて「早川義夫ライブ」という映像作品がVHSとLDでリリースされていた。これを是非DVDで再リリースして頂きたい。切に願う次第である。



ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)

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レコード・コレクターズ増刊 日本のロック/ポップス 2012年 02月号 [雑誌]

 レココレでは、以前日本のロック、ポップスに関する本として「日本のロック/フォーク・アルバム・ベスト100」を出していましたが入門者の方とか日本のロック等について俯瞰的に知りたい、ガイド本が欲しいとお思いの方ならそちらの方をお勧めします。こちらは、例のアーカイブシリーズで以前レココレで特集した記事をそのまま再掲載するシリーズです。ですので、取り上げられたアーティストは深く掘り下げらられていますが、これで「日本のロック/ポップス」全部がつかめるというものではありません。
 
 ただ、取り上げられているアーティストを通じて日本のロック、ポップスに関してここまで深く踏み込んだものはあまり見当たらないので、非常にありがたい1冊だと思います。

 欲を言えば、というか不思議なのは、GSの特集はここに載らないの?キャンディーズ特集も載せるべきだったのでは?さらに、URC特集については追加訂正のコーナーでもっと拡大してほしかったなあと3点ありますが、まあ、ここまでの本を今出せるのはレココレだけなのでその頑張りに免じて星5としました。

 今のロック・ポップスを知るには欠かせない1冊だと思います。ここで取り上げられたアーティストが作品が無ければ日本のロック・ポップスは随分と違ったものになっていたことは間違いないでしょうね。

 今後もレココレの特集、増刊期待しています。



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