フィリップ・アントルモンというピアニストは、室内楽も得意というだけあって、非常に正確なピアノを弾く人だという印象があります。そして、ことフランスものとなると、大変にエレガント!ともすれば冗長になったり不気味になったりしがちなサティが、とても美しく響きます。
タイトル曲の Je te veux が一曲目ですが、控えめで品のいいワルツに仕上げる感性と腕はさすがだと思います。そして、後半になるにつれ現代音楽的な曲を、やはり品良く紡いでいき、一聴何気ない雰囲気ですが、とても味わい深いアルバムに仕上がっていると思います。
最近は教育に力を注いでいるようですが、サティを弾くアントルモン、素敵です。
今までアントルモンの演奏を聴いていて、大作でいいものがない。失礼だが、この小品集を聴いて初めてアントルモンの演奏が良いと思った。決して技術がないわけではなく、大作向きの表現力が足りないだけだと思う。ちょっと、見直した。
グローフェ『大峡谷』、きっと中学時代に音楽の時間に聴かされることが多い曲だと思います、私もそうでした。(今はどうなんでしょうか?)こんなに良い演奏で聴いたかどうかは分かりません。「山道を行く」が有名ですが、私は、「日没」「豪雨」の辺りが大好きです。色々なテーマは折り重なるようになって、終幕を迎えます。この辺りをオーマンディは雄弁に描いています。トスカニーニ・NBCの演奏と共に、愛聴盤の一つです。ガーシュインの『ラプソディ・イン・ブルー』も、最初のクラリネットのソロ、トランペットのソロ、どれをとっても、見事としか言えません。こんな名演奏が、この値段って安いと思いませんか?
演奏家が無名だからだめって・・・
あなたが知らないだけでしょ。
一般にはそれほど知られてないかもしれないけども、指揮者のヴィトやヴァイオリンのダール。オルガンのリュブサムなど、本当の実力派がそろっているではありませんか。
もともとエイベックスのクラシックはNAXOSレーベルが元になっているから、ここに上げられている演奏者は信頼できるものですよ。
ただやっぱり、ほかの会社から音源買い取って切り取って、CCCDにして自社の製品として売るAVEXの方針はいただけませんね。
私はベートーヴェンといえば「第9」や「運命」のような重厚でメロディがシンプルでわかりやすくて迫力のある厳粛な音楽というイメージだったのですが、このアルバムはPOWERFULだけじゃない様々な曲が詰まっています。
DISC1の#1はベートーヴェン唯一のオペラ曲(歌はなし)や、DISC2の#2 #3 #5 #7のピアノ曲は、静謐でなおかつロマンティックな曲で夜にぴったりです。タイトルしか聞いた事がなかった#2「月光」#7「悲愴」もタイトルだけだと暗いイメージがしていたのですが、全然そんなことはなく、ベートーヴェンが恋していた時に(生涯独身でしたが、恋多き男性でモテていたと解説に書いています。)書いただけあって、柔らかくSWEETで美しい曲でこのアルバムの中で1番好きです。
逆に#8〜#10は爽やかで、明るい気持ちになり高揚感あふれる感じで憂鬱な朝にも?晴れやかな気持ちになるような曲です。
DISC1の#3 DISC2の#4 #8 #11は小中学校の掃除時間にかかっていたこともあり、これもベートーヴェンだったんだ!と今更ながら新しい発見でした。
2枚組でジャケも美しいですし、ベートーヴェンについてや各曲の解説・曲にまつわるエピソード等もわかりやすく書かれていますので、クラシック初心者の私にはありがたいです。
欲をいえば「第9」「運命」第1章も聴きたかったです。
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