数ある宗教の中で仏教は比較的穏やかな宗教だと一般的には思われるかもしれないが、本書を読む限り、仏教も大変厳しいものがあるということを再認識した。
本書で著者は以下のように言っている。因みに著者は福島から遠く離れた安全な場所で発言されているのではなく、正しくフクシマにてこれを言っている点は付け加えておく。
「しかし(放射能に)悩まずにいようではありませんか。自分が感知しえないもののために うんざりするのは仕方ないが、わざわざ悩みを深める必要はない」(55頁)
「放射線量は低ければ低いほどいいという考え方があります。しかし、じつはそうではないかも しれない。」(60頁)
著者のこういう発言を科学的な見地から見て正しいかどうかは不明である。本書で著者が引用している科学的データや科学者の発言に関しても、それが正しいかどうかを判断出来る知見が僕には無い。
但し、著者は科学として上記を発言したとは僕は思わない。仏教という立場で放射能を語っていると僕は読んだ。
本書で著者は鴨長明の方丈記を読み解くことで、仏教というものの厳しさを説いている。全ての執着心を捨て、「執着心を捨てた自分」すらも捨てなくてはならないという仏教の在り方がそこにはある。
その場所から今回の震災を見直した場合に違う風景が見えてくるということなのだろう。上記発言に関しても「放射能が体に悪いかどうか」という科学的な見地を突き抜けたその先で、「放射能という煩悩からどうやって抜け出すのか」、「放射能に執着する心」をどうするのかという問題を提起している。全ての人は遅かれ早かれ死から免れないという状況の中で、善く生きるということは何なのかという問題に組み立てなおしたとしたら、あるいは上記のような発言も可能なのだろう。
それをフクシマという場所で著者に言わせているのが仏教の厳しさであり、同時に仏教の勁さでもあるのではないだろうか。それが僕の読後感である。
反原発の立場にある複数の論客が、
それぞれ異なるバックグラウンドから
震災・原発問題に対する体験や取材・活動に基づいた
分析・提言を行っている書籍です。
佐藤栄佐久氏以外の著作は読んだことが無く、
より多方面から原発問題を捉えるのに有用だと思います。
小出裕章氏:
原子力の専門家の立場で40年以上も原発に反対している方で、
社会的な問題から科学的な問題までかなり網羅されていると
見受けられました。遅ればせながら彼の著作を読もうと思います。
西尾幹二氏:
保守派論客としての印象が強い方ですが、
エネルギー問題をイデオロギーで考えるのではなく、
合理的にクールに考えようと述べています。
右、左に単純化するのは間違いだと思います。
佐藤栄佐久氏:
経産省+東電の原子力政策と闘った前福島県知事が、
その隠蔽体質の問題点と、地方自治からの観点から
原発問題を斬ります。原発マネーで地域が潤うのは
一過性のもので、麻薬患者のように原発に依存してしまうと分析しています。
福島原発の真実 (平凡社新書)を読むと更に理解が深まります。
桜井 勝延氏:
東日本大震災により被災した南相馬市の窮状等を積極的に訴え、
米国タイム誌から、2011年版の「世界で最も影響力のある100人」
に選ばれた市長さんが東電に無作為を批判します。
合併によって生まれた市の中に20km圏内・30km圏内
30km圏外の区域があり、平成の大合併の弊害を知ることができます。
恩田勝亘氏:
原発問題の取材暦が長く詳しい、フリージャーナリストで、
原発建設を断念させることに成功した浪江町の
被災者にふりかかる不条理さを書くところからはじまります。
原発立地自治体・周辺自治体の社会的問題点や
住民意識がわかる内容となっています。
星 亮一氏:
幕末・戊辰戦争などを題材にした歴史小説家で、
お墓に避難すると遺書を書いて自殺された老女の
エピソードを通して国・県の無作為を非難しています。
玄侑宗久氏:
芥川賞受賞経験のある僧侶の方で、政府が主催する
復興構想会議のメンバーです。
氏の雪月花というブログの内容を編集したものです。
福島県三春町在住で、実体験と活動を通した、
ヒューマニズムに溢れる文章です。
浜通りから遠く離れた会津地方も同じ福島でひとくくりにしてしまう
ことに対して、国・県・マスコミを批判しています。
また、保証金のために出荷のあての無い農作物を
作ることを指示する農協に対する批判もされています。
「幸せ」とは到達したと思ったら逃げてしまう永遠の幻のようなもの。 めざすものを、 「幸福」から「安楽」「極楽」に方向転換する。 それだけで人生は別な顔を見せてくれる。 このようなスタンスで、 筆者は、今を極楽にするための考え方、生き方を提唱します。 これが、見事に言えてるな~、なのです。 とても分かりやすて面白い文章で、 この類いの本にありがちな説教臭さを感じさせないのがいいです。 人間関係に悩んだ時など、 ぱらぱら拾い読みするだけで、充分にヒントが得られるます。
般若心経の現代語訳と解説の本。
仏教に興味があっても、なかなか入門書探しは難しい。特に若い人にとっては文章も古く、共感しにくいものが少なくない。入門するにもその門が狭いということは否定できないだろう。
そこにこの本が出てきました。
お経というものは深い意味を持っていて、それは普遍的な人間の悩みや生き様についての尊い教えが含まれている。
仏教に限らず他の宗教でも色々な派ができている。それら新しい教えに人が集まるのは当然かもしれないが、その陰で変わらずに人の心をとらえてきた、古びない考えがあります。
難しいことの一切ない、広く通りやすい、そして深い門というべき一冊です。
悟るとか心を律するという感覚がわからず、意のままにならぬ 我が心に嫌気がさしている時にこの本に巡り会いました。 私にとってこの本が教えてくれたもので一番大きいと思ったのは 「とらわれない心をめざす生活は気持ちいいものである」という ことでした。かけらでもそれがわかれば、これまで曇った目で 見えていなかった多くの先人の言葉が胸を打つようになりました。 まずこの気持ちよさを知らないと禅に限らず宗教をやってもムダと 思えます。宗教は「勉強」してきたが心苦しいままのたうち回って いる人に勧めたい。既にそこに向かっている人にはいまさらかも。
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