剣アリ魔法アリ貴族アリの王国物語ですね。 主人公も剣で活躍しますし、登場人物の感情も生々しく、悪化する政情等、先が楽しみな作品ではあるのですが、やや気がかりな点も。 一つには、主人公格を二人作ってしまってはいないか、という点です。 銀英伝とかそれくらいの作品に仕上げる自信があるなら話は別ですが、通常、読者は主人公以外の登場人物に、筆者ほどの愛情を注がないものです。 なので主人公格が複数いるのは筆者の独りよがりになりかねない鬼門なのですが、その辺がどう位置づけられているかは、第三巻ではっきりしそうです。 もう一つ気がかりな点は、主人公の見せ場を作りたいばっかりに、主人公を無理矢理な状況に落としてる印象がある事です。落とし穴に足を突っ込むような感じで陥穽に足を取られる主人公は、お世辞にも格好よくないのですが…… 最後にもう一つ。『これは英雄譚なんだ!』と主張したいのはわかりますが、格好つけ過ぎで、未来予告もしすぎです。きめ台詞が滑ってますし、登場人物が将来の歴史家からどう評される、なんてのは誰の目からもその流れが見えてからで充分です。ネタバラししてどうするんですか。 主人公が救国の英雄になるのか亡国の英雄になるのか予断を許さない状況が、王国自体の持つ欠点や危機ともあいまって緊張感があっていいのですが、それ以外の部分では作者がどーにも勇み足過ぎなのです。もう少し抑制してください。
ジェレイドの策略によって北の隣国からの侵攻が始まり、解放軍の立場が強くなる一方で北の農民達が侵略に苦しみ喘ぐと言う状況の今巻。国務大臣カルレーンが休戦協定の使者として解放軍の拠点に向かう中、北から侵略してきた傭兵から家族を守るために少数の騎士と農民が決死隊を組んで戦うという展開です。前者は半分クラウディアの独壇場になっており、ここは人によって快不快が分かれる場面だと思いますので、後者がこの巻一番の読みどころでしょう。改めて、アレス以外の戦いに関してはかなりまともに描かれている事が確認できます。非常に熱い展開です。
今回、ジェレイドの策がいかに悪辣なものかが克明に描かれる一方で、ジェレイドがどうやって農民の権利を獲得するつもりだったのかも明らかになります。今回の策によって犠牲となる人々は今までとは方向性が違いますが、ほかに方法が無ければそうした策も取ってしまうのはむしろジェレイドらしいと言いますか、大のために小を捨てる考え方はジェレイドの過去にも係わっていることなので、このスタンスを貫いてもらいたいです。ただ、「自分は最悪の罪人」という旨のモノローグが多いと、それを免罪符にしているように見えなくも無いので、その辺はもう少しうまく表現してもらいたい。
ほかにアレスの代わりにベアトリスが解放軍の拠点に留まることになったり、北の軍にも強力な魔術師っぽい人物がいたりと、相変わらず先の展開を期待させる要素を残したまま終わります。しかし、1巻からそうなんですが、口絵や挿絵に女性の裸が入るのは作者のこだわりか何かでしょうか。大した読者サービスにはなっていないと思う(むしろ露骨で若干引く)ので、もっと別な絵を入れてもらいたいです。
これはうまい!
熊本に住んでますが ほんとにおいしいですよ
面白さは他の方のレビューで描かれているので、私は違う部分の事について書きます。 前巻のラスト、そしてこの巻で、熊本市内の情景が描かれていますが、その再現度の凄さに度肝を抜きました。 一目見て場所が分かる程、主要な建物を忠実に描かれています。 もうこれだけで、一色氏の、作品に対する並々ならぬ情熱が感じられます。
作品自体も本当に面白いです。 是非、1巻から読んで見られる事をお勧めします。
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