文庫で3分冊、1000ページ超と聞くとビビルかもしれないけど心配無用、一気に読めます。(私はビビッて先ずは一冊だけ買ったが、直ぐ二冊目三冊目を買いに走るハメに)
ただし必ず夜読むこと。
浮世の悩みとかはいったん忘れて、ブランデー片手に読めばあ〜ら不思議、幻想的な語彙の渦に巻き込まれて、貴方はいつの間にかアラビアの夜。
あと、寝不足に注意。
ナポレオン侵攻時代の話の方が尻切れの感あり、その分★ひとつ減。
マイスターというのはすごいレベルにいると言うことが実感。
指揮者によって音が変わる理由も何となくわかった気がする。
カラヤンの厳しさと楽団との不仲。
プロフェッショナル同士のしのぎあいなのだろうなぁ。
大して厚くもないこの文庫本に、よくもまぁ、30編も収録したなぁと思わせるアンソロジー。しかも、執筆者は、芥川賞、直木賞をはじめとした文学賞受賞者がほとんどで、レベルも高い。
もちろん、純文学好きではない私なので、全ての作家を読んだことがあるわけではない。おそらくこういう機会でもなければ、ヨムことのなかった作家も含まれているが、仲な楽しめる一冊だった。
基本的に、長編小説、しかも大長編が好きなので、こういう超短編はあまり好みではないのだけれど、どれもジャンルも違い、飽きが来ないものだった。こういう短編集もいいかも。
収録作品の中では、やはり私がお気に入りにしている、古川日出男、平野啓一郎などはもちろん面白かったのだけれど、それ以外の作家でも、いしいしんじ、歌野晶午、高橋源一郎、橋本治、矢作俊彦、重松清、玄侑宗久なども、良かった。
とにかくこれだけの人の作品が収録されていれば、いくつかは、面白い作品が見つかるだろう。面白い試みだった。
夢か現か。『ドラクエ』か『マイト&マジック』か共通する世界観。そして『ウィザードリィ』級の暗黒波動が読み手の想像力を最大限に喚起する至福の読書体験と言ってもいいか。意図的に作者が企んだロールプレイング風調味料が実にしっくりマッチしているアラビアン・ナイト・ブリード。作中作が幾重にも絢爛たる旧世界アラブ社会の闇の奥をグイグイ抉り、直球とばかりは言えない悪魔的な作為の書。構築された作者の世界観に飲み込まれたら最後、溺れようが息継ぎできないまま流され漂うあなた任せ状態。もうどうにでもして。こういう目くるめく読書体験はメジャーデビュー作品『13』当時から作者が濃厚に所有していた作家的資質によるところ大である。言ってみれば大法螺吹きの系譜。オーソドックスな作りながらツボは確実に押さえる手練れぶりであるなあ。 無理矢理設定を読者に叩き込む冒頭さえ乗り切ればOK。乗れなきゃそのままダンジョンから出ちゃえばいいのだからこれほど簡単なことはない。でしょ(^_^;)。これまでゲームのロープレで納得いかなかった点を、しっかり古川日出男流に料理しているところがミソ。腑に落ちる。目から鱗。戦士やら魔法使いが入り乱れてダンジョン攻略に血道を上げる様が理路整然と描かれればそりゃ納得しますがな。モンスター倒せば金が貰えるなんてゲーム作者の都合だけじゃんと思っていたけれど…ふむふむ、なるほど、そう来たか。古川日出男かなりのゲーマーと見た。ドラクエでいう大ボスとの遭遇編でヒートアップする夜の種族の物語。魔法戦士ってやっぱ凄いのね(^_^;)。これって冒険小説のカテゴリーに無理矢理引き込んじゃちう。『このミス』上位は確実かと(しっかり入ってますねえ)。 古川日出男ってこの作品で大ブレークしたかというと、実はそうでもなかったりするのだな(^_^;)。業界ウケはいいようですが、如何せん角川書店経由だから書店でのタマ数が少ないのだ。億単位の広告費でも掛けて積極果敢に売り出せば、元は取れるほどには売れるかもしれないのに、平積みにも数えるほどの冊数しか書店では並んでいませんでした。営業が緩いのかな。ともあれ、じわじわと売れてゆく…そんな本であって欲しいものである。ゆっくり読めば3週間は楽しめること請け合い。ささ、あなたも今宵、浮世離れした活字でのダンジョン探検に浸りませんか。ハリウッドで実写版で映画化されれば、こりゃウルトラ級の超大作間違いなし。おっと、その前に英訳されなきゃ無理か。
福島出身の小説家が福島の被災地に行ってみた。そしたら、ショックで書けずにいたはずの小説がむこうから立ち上がってきてまた始まり始める新しい小説への第一歩か、これは。あるいは、いままでものしてきた作品と、作家としての人生が、歴史が、震災と原発の暴走を契機として支離滅裂ぎみに自らを問い直していた数ヶ月の体験と内面の描写か。何だかよくわからないのだが、著者のこれまでの作品が好きな人にはおそらく自己の言葉の経験値から感応するところがあれど、そうでない人にはかなりわけわかんないんですけどな一冊だろうと思われる。現地のルポルタージュとして読める部分もあるが、現実界から突如すっとんだりしてやや戸惑う。あの日から続く日々が文学にもたらした衝撃を、その混乱ぶりを愚直に抱えたまま表現したのだろう、か。ここから次にどんな小説が生長するんだろうかと、とりあえず期待はできるのだが、はたしてどうだろうか。
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