昔、イスラエルから来た留学生の娘にこう言われました。
「あなたたち日本人は、対戦中、ドイツと同盟を結んでいたのに、 どうして平気な顔で「アンネの日記」が好きだなんて言えるの?」 と・・・。
二の句が次げませんでした。
まったくその通りです。 僕らはユダヤ人を迫害する側だった。
「原爆」と「沖縄」で、 なんとなく、錯覚してるんですよね。 自分たちは「迫害された側」だと・・・。
みなさん、そのこともう一度考えてから、 「差別」とか「不戦」とか「大東亜共和圏」 について語りましょう。
簡単に言います。
アンネを殺したのは、間接的に、 僕らの先祖です。
わかって下さい・・・。
この本で取り上げられているのは、次の10冊の本です。
『アンネの日記』
『聖書』
『コーラン』
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
『資本論』
『イスラーム原理主義の「道しるべ」』
『沈黙の春』
『種の起源』
『雇用、利子および貨幣の一般理論』
『資本主義と自由』
主に宗教と経済の観点から、これらの本が世界にどのような影響を与えたのか、本文を引用しつつ、池上彰さんらしい解りやすい語り口で説明してくれています。
単に本の内容を紹介するだけでなく、現代社会に照らして、それぞれの本がどのような意味をもつかを説明してくれているので、原本は難しい内容なのでしょうが、どの本のエッセンスもすんなりと理解することができます。
私は特に、冒頭に取り上げた『アンネの日記』が中東世界に強い影響を与えているという話が、実に興味深かったです。
60年以上前に書かれた中学生の少女の日記が、今の世界情勢に大きな影響を与えているという事実。
『世界を変えた10冊の本』がテーマとしている「本が持つ力の大きさ」を感じました。
もちろん、『アンネの日記』以外で取り上げている全ての本について、それを感じることができます。
一度読んですんなり理解できますが、奥深い内容なので、もう一度じっくり読み返したいと感じた一冊です。
第2次世界大戦下、実在したユダヤ人少女アンネ・フランクの半生を描いた 作品です。とても忠実に描かれており、マイケル・ナイマンのミュージックでも 涙しました。物語は、13歳の誕生日の日から始まり、次第にユダヤ人狩りが激しくなります。 そんなとき用意しておいたのが、事務所の「裏の家」です。アンネたちはここを隠れ家として 2年間生活していました。そんな中、作家になりたいという夢と、生き延びたいという希望を 忘れずに、日々日記をつけていました。最終的に警察に捕まり、晩年はマルゴーとともに 強制収容所で息を引き取ります。
私が特に感動したシーン。それは、8月4日、捕まられるとき、アンネが父オットーに 力強い目つきで軽く頷きます。そのとき、悲しい曲が流れ、涙が止まらなくなりました。 私たちは、今、こんなにも幸せな生活をしています。アンネも、こんな時代に生まれてきたら、作家という大きな夢も、実現したのではないでしょうか。そして、私たちは、 今の世の中を、精一杯生きなければなりません。立ち向かわなければなりません。 世界が平和になるその日まで、戦争・差別があったということを決して忘れてはいけないのです。今なお幼い子供たちにも、教えていかなければならないのです。
|