非常に重厚なドラマであり、丁寧に描かれている為3時間を越える大長編になっています。しかし、後半はめまぐるしく展開が進んでいくので私は長く感じませんでした。開拓時代ということで、まだ「法」も「国家」も現在のように強固なものではなく、自分たちが住む小さな町でさえ無法者たちに脅かされているので、父親や夫が家族を守る必要が非常に強かった時代といえます。それだけにこの映画から「家族」や「兄弟」という言葉がよく出てきます。法律家であるワイアットの父でさえ「血は水より濃い」といい「法の拘束力」や「他人」を信頼できずにいたのですからいかに治安が不安定で、家族という小さな共同体の結びつきが大事だったかがよく伝わります。このドラマはワイアットの鬼神のような活躍もさることながら、家族や愛する者を守ること、そして、何事も無く一日を無事家族と過ごせることが如何に尊く幸せなことなのかを考えさせてくれます。そして、家族がいつも側にいるのが当たり前の我々に、今一度当たり前のことが当たり前でなかった時代があったことを教えてくれるでしょう。おすすめです。
私は、ロバート・B・パーカーの、その中でもとりわけ「スペンサー」 シリーズが大嫌いだ。フェミニストで料理が上手く、いつも笑えない ジョークを飛ばし、身体を鍛えている探偵なんて要らない。パーカー 自身も勝手にレイモンド・チャンドラーの後継を自認しているのも気に 入らない。だから、この作品を見つけたときも期待は一切していなか った。では何故買ったのか?ウェスタンが好きだからだ。 この作品は、これまでのパーカー作品に見られた軽薄さが全く無い。 陳腐な言い方だが、芳醇な味わいのウィスキー(でもコーヒーでも) を口の中でゆっくり味わうように、ワイアット・アープとその周囲の 人間達の匂いが染み入ってくるような味わいがある。私のように、 これまでパーカー作!品を嫌っていた人にこそ読んでもらいたい傑作だ と思う。ただ、大半の日本人ように「ワイアット・アープ=OK牧場 の決闘=正義の保安官」程度の認識しか持たない人にとっては内容が 把握しにくい部分もあると思う。
今から81年前の1929年1月13日ロサンゼルスで80歳の伝説のガンマンが死去す。
その人こそ1881年、有名な「OK牧場の決闘」でモーガンと兄のバージルそしてドグ・ホリディと共に見事なガンさばきで悪漢をやっつけた、あの保安官ワイアット・アープです。
私たちにとってそれは、映画『荒野の決闘』のヘンリー・フォンダであり、そして映画『OK牧場の決闘』のバート・ランカスターであり、あるいは映画『墓石と決闘』のジェームズ・ガーナーであり、一番ごく最近では映画『ワイアット・アープ』のケヴィン・コスナーであるのですが、なんとこれが実在の人物であるということをご存知でしたか?
私は女だてらに小学生の頃に西部劇にはまってしまって以来二十余年、ともかくガンマンといい映画テレビのウエスタンといい、チャンバラを横目に見ながら追い求めて来て(時代劇もまた好きなものですから困ったものです)、逢坂剛×川本三郎『大いなる西部劇』や、六人のガンファイターと称した逢坂剛・川本三郎・菊地秀行・永田哲朗・縄田一男・宮本昌孝の共著『西部劇への招待』などを読んでも、ほとんど教わることがないほどマニアになってしまっているのですが、スクリーンに登場する名立たるガンマンたちが、あのビリー・ザ・キッドさえもが、まさか実際にいたとは思ってもみなくて、それを自覚したのがここ数年前というのですから呆れたものです。
しかも晩年彼は映画監督ジョン・フォードと親交があって、時代の生き証人として自らの西部開拓史を目の当たりにした体験を話したということで、これはおのずと西部劇製作に大きな影響を与えるものだったはずですね。
ガンマニアとしては、彼が愛用したというコルトピースメーカー(例の銃身の長いリボルバー)は16インチ(40センチ)という長さで、早打ちにはもちろん、手が大きくて指の長い私自身でも非常に使い辛くて困ったものでしたが、どうやら本当は使ったことのない作り話だったらしいですから、使いこなせなくて当然で安堵したということも思い出しました。
それにしても、1929年という世界大恐慌の年に亡くなったワイアット・アープも、まさか80年後にはほとんど自分自身も忘れ去られてしまう事態になるとは夢にも思っていなかったでしょう。
記述日 : 2010年01月13日 11:17:34
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