ちょっと黒人ぽいというか、日本人女性ジャズ歌手にありがちな語尾を伸ばし、鼻にかかった歌い方をしないといころがいい。かわいいだけの女性ジャズシンガーが多い中で、久しぶりの本格派である。選曲も、セロニアス・モンクの「ニカズ・ドリーム」、「ラッシュ・ライフ」コルトレーンのバラードで有名な「セイ・イット」など、粋な選択。これからが楽しみな歌手の一人(松本敏之)
40年以上の長きにわたり連れ添った、妻への鎮魂の書だ。 今まで書くことのなかった夫人について赤裸々に語り、 凄惨な闘病生活について語る。 自らの内面をさらけ出しながらも含羞に満ち、言葉が 美しく紡がれてゆく。 夫人の生い立ち、出会いから結婚、出産。 後には半分別居の生活であったにも拘らず、二人をつなげて いたものは何だっのか。 読了後にきっと、読者は等しく納得するものがあることだろう。
『…大きな青筋の立っているような大きな乳房から熱い母乳を 容赦なく、ぐいぐいと飲んだのである。乳母は抱いている小さな 生命から、ぐいぐいと母乳を飲まれた。』
いかにも著者らしい、詩人の文章に惹きつけられ一気に読んだ。 本書は「裸足と貝殻」「柴笛と地図」につづく3部作と言えるが、 最秀作となった。
ある日突然、幼い娘が身体に変調をきたした。 言うことを聞かず食事も満足に取ろうとしないのを皮切りに、 手指の自傷、臀部を左右に振る奇妙な歩き方、赤いポストや物音に対する過剰な反応。 そして夜毎の下顎の痙攣と、舌の咬傷。
当初は心因性のものと考えていた両親も、症状の激烈さにただ事でなさを感じ、 近所の診療所、救急病院と駆け回るが、正しい診断が下されないまま無情に時間だけが過ぎていく。
やがて行きついた大学病院で、怖れていた診断が下る。
破傷風。
即座に治療が開始されるが、娘はわずかな物音で頻回に激しい痙攣を繰り返し、 呼吸困難からチアノーゼをきたす。 そばに付き添う両親は寝る間もなく看護に明け暮れ、 自身も感染しているのではないかという恐怖感から次第に精神を病んでいく。
日本ではほとんどお目にかからなくなった病気だが、途上国を中心に年間5万人程度の死者を出す破傷風。 その死亡率は現在でも50%にのぼるという。 破傷風という病気に対する生々しい知識を得られるのもさることながら、 幼い子どもを病魔に蝕まれる両親の悲嘆や諦観、さらには極限状態における病的精神にまで踏み込んだ 鮮烈な作品。
小学校によって採用している教材は違うでしょうが、この本の最後に入っている『おてがみ』は小学2年生の教科書に掲載されている定番中の定番、ほのぼの話。
少しわがままで、めんどうくさがりやで、「ちぇっ」というのが口ぐせのがまくんは、玄関先でおてがみを待っている。いつもおてがみがこないことを嘆いているがまくんを見て、なかよしのかえるくんはこっそり家に帰り、がまくんへのてがみをしたためた・・・。
最後は、ほんのり、心があたたかくなって、うれしくなってしまうお話。
このほかにも、『すいえい』というおはなしもお勧めです。簡単にいうと、がまくんがかえるのくせに水泳をするときに水着を着ていて、それがあまりに不恰好なのでみんなに笑われて、親友のかえるくんまでもが笑ってしまう、というお話。
いじめみたいでひどい、と感じるひともいるようですが、私は単純に、水着姿のがまくんがいい味出しすぎてて、吹き出してしまいました。
そんじょそこらのギャグまんがよりずっと、素直に、よい気持ちで笑えます。
笑える話あり、ほのぼの話あり、のかわいい一冊。ぜひお手元に。
ふくろう君,一人暮しですね。 寂しくはないかと思いきや,そういうこともなさそうです。 エンピツが短くなっちゃったなどと言ってぽろぽろ泣いたかと思うと, じきケロッとしてのんきにお茶を味わっているくらいですから, まあ,きっと一人には慣れっこなんでしょう。 もしかするとふくろう君は,一人ぼっちだなんて, これっぽっちも思っていないんじゃないかな。 毛布をかぶせたりはがしたりするのも忙しいし, 階段をかけ上がったりかけ降りたりするのも骨が折れるし, 訪れてくるものもいろいろとあるようだし。 そういう自分を眺めていれば,それだけでいつも「二人」なのかも。
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