イチオウです。
「構造分析の素人」。これは著者の経歴を見れば解るでしょう。構造が構造主義のだということも。フランス現代思想で解るはずです。
「タイトルがおこがましい」、「現代思想が先にあって、その枠組みの中に…」。たしかにこれは誤解を招きますね。
ですが、現代思想が先にあって、その枠組みの中にといいのは正解です。
本のまえがきに書いていたと思いますが(文庫だけ?)、映画で構造分析。構造→映画ではなく、映画→構造主義。映画で構造主義を読み説こうというもの。
本を読むときにこう言ったことを意識しないととんちかんなことになります。
批判はそこからです。
否定ではなく、批判を。
一度は本に同化してからの否定でないと、批判的にはならないと思います。
否定は全てが否定ですが、批判は全てを否定しないはずです(ものにもよりますが)。良いところは良いと言うのが批判的なはずです。
映画を使って現代思想を考える本。ここを間違えて、現代思想を使って映画を読み説くにしたら、異常に強引にしか読めなくなるでしょう。
トリュフォー監督によるヒッチコック監督へのインタビュー。大判でぶ厚いのでどれだけ微に入り細を穿つ内容なのかと思いきや、とっても基本的な映画の技法についての対談でした。ヒッチコック監督の映画を一通り見ていれば(せめてハリウッド後のもの)、それほど細かいことを知らなくても楽しめます。残念ながらインタビュー時期の関係で最後の二作品(「フレンジー」「ファミリー・プロット」)については触れられていません。映画狂的なトリュフォーの細かい突っ込みを軽くいなしている感じがあって名匠の貫録十分です。
俳優の演技を否定し、心理描写を否定し、現実に起きていることを映すだけのリアリズムを否定する。「たかが映画じゃないか」「サプライズよりサスペンス」「イメージは映るのではなく作るものだ」「色彩や線はない。あるのは光と影だけだ」「画面はエモーションで埋めなければならない」というすばらしい言葉の数々。観客をひきつける秘訣としての空虚な記号「マクガフィン」。
感動しながら一気に読めます。
元々のTV版を知っている人たちは、この映画を観てどう思ったことだろう?この映画版では「おはようフェルプス君・・・」で始まる、あの名フレーズこそ生かされているものの、あとは全くといっていいほどのオリジナル、ましてや主人公の人柄や性格が踏襲されておらず、他のメンバーたちもすべてチェンジ・・・。
おまけにあのラストじゃ、TV番組を知る人たちを裏切ってしまうことになるわけだ。TV版を映画化したものって昔から結構あったけれど、これほどまで、原型を留めていない映画は無かったような気がする・・・。
とここまでは随分とけなしてきたが、実のところ、この映画自体は本当に良く出来ているように思う。
このようなパターンの映画では物語のどこかに無理や矛盾が出てくるものだが、観終わってその内容を振り返ってもほとんど脚本に矛盾が見当たらないのだ(唯一の疑問:あのメガネは置き去りにしたはずではなかったか?)。
そして、手に汗握るサスペンスやアクション、追跡劇有りで、盛り沢山で見ごたえ十分だし、人物も結構掘り下げられていて、観ているほうもコロコロと騙されてしまうのが何とも愉快ではある。
結局この映画は傑作とは言えないまでも、年に数本あるか無いかの娯楽大作に仕上がっているのではないだろうか。
第2作において原作の面影が全く無くなってしまうのが、何とも寂しい気がする。
30分一話完結ですので、どの作品もムダがありません! 起承転結が、しっかりした仕上がりになっており、特に「結」の部分に力を入れています! あっと驚くラストのオンパレードです! 毎晩一話づつ鑑賞するのも良いでしょう!
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