和服のよく似合う幸田文を母にもつ青木玉が、母親の随筆の中から着物に関するもの38編集めた随筆集である。「きもののいろは」「きものの春夏秋冬」「きものの心意気」の三部に分かれている。例えば「初夏を着る」の随筆では「木綿もののひとえは、若い方にぜひ一度は着ていただきたい。夏のきものは心意気で着るものです。白地へ身丈いっぱいに青芦を、青くつんつんと染めて着てみたい」と季節に合う着物の選び方を述べている。
「あとがき」で元気だった頃の母の姿を思い浮かべる。「どの着物を着て、帯は何を合わせていたか、あれかこれか、改めて過ぎた時」を改めて懐しく振り返っている。
しだいに着物ばなれしていく現代、逆に着物の佳さ、美しさ、着た人の取り成りのやさしさに郷愁を感じる今日この頃である。着物には関心の薄い娘にも、再び着物への道をゆっくり取り戻してほしいと期待している。
青木玉の九つの対談集になっています。 内容は、幸田一族の話、幸田家の生活、躾の話等で、すべて幸田露伴、幸田文、青木玉の三代に渡る著作の背景にかかわる話です。
この本を読んでいると、幸田一族の凄さが解りますし、そこにおける露伴の位置づけなどが解り、興味深いものがあります。 それと同時に、そうした家族環境の中での娘文、孫娘玉と露伴の関係も、かなり見えてきます。
それにつけても、幸田文と言う人の「強さ」を感じずにはいられません。 厳しい露伴の教え、弱い夫との離別、病弱の玉。 押し並べて、すべての面倒みが文のところにあったようです。 病気を押して、露伴のわがままを聞いて、伊豆まで伊勢海老を求めに行くところなど、「強さ」以上のものを感じます。 それがあるからこそ、44歳になって著述を始め、しかもあれだけの作品を残すことが出来たのでしょう。
この本を読んで、改めて幸田文の著作をすべて読みなおしたくなりました。 きっと、最初読んだ時とは違って、深いところまで読み込めるような気がします。
前回の旧版よりも大幅に改定されている。 ページ数の関係から割愛せざるおえなかった部分を大幅におぎなった結果100ページ以上の増量になり400ページを超えることとなった。 確かにこれによって明らかに欠如していた必要な記述が補われることになった。 だが、まだ足りない点があるように思う。 最後の4巻(本当は文化史編がまだあるが)なので詰めて書いたということだろうが、逆に5巻を設けて4巻とそれぞれ300ページくらいにしてほしい。 それくらいしないと複雑な近現代史を受験用といえども書ききることはできないだろう。 内容は著者の現代史に対する考え方が前面に出ていて普通の参考書と志向が違うので、受験用には一部、読みにくい感がする(どんな思想の人であっても) 記述不足という点で星一つ減点である。
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