相手の名を呼ぶ、ということ。
この日常的で不可避の行為につきまとう、あの居心地の悪さは、いったいどのように説明されうるのだろうか。相手を何らかの語で呼ぶその時、人は否応なく、何らかの語を選択しなければならず、それが発された瞬間、つねに何か決定的なことが、そこで語られてしまう……。
『赤い天使』の全篇を貫くのは、こうした「呼びかけ」をめぐる緊張だ。それはとりもなおさず、階級を原理とする戦場に、性と愛を持ちこむことの緊張である。
ヒロイン「西看護婦」は、前線の病院で出会った性的不能の軍医に、自らの名「さくら」の由来を親密に語る。そして間もなく、彼への愛が芽生える。映画の終盤、軍医は性的不能を克服し、遂にヒロインを愛するに到るが、そこで軍医は、ヒロインをはじめて姓「西」ではなく、名「さくら」で呼ぶのだ。「さくら、好きだ。今なら愛していると、はっきり云える」
軍医の性的不能を癒した時、ヒロインは「西が、勝ちました」と云う。だが、この台詞は訂正されるべきではないか。勝ったのは「西」ではなく「さくら」なのだ。
ラストシーン、軍服を剥がれ、裸で横たわる軍医の死体。その胸にヒロインは、「さくらの認識票」と軍医が呼んだ彼女自身のキスマークを見出すが、ここにおいて、ふたたび「さくら」の勝利と軍医の敗北が、告げられている。
「西」「さくら」が、官能的に揺らぎ続けるのと対照的に、軍医はけっきょく最後まで、ヒロインから「軍医殿」より他の名で呼ばれることはない。そして、「平和な時、日本で会いたかった」というような、驚くほど退屈な台詞を発しさえしてしまう。
そのような凡庸な人物として、軍医は、そして男たちは「さくら」に敗北し続けるのだ。
なかなか画像がきれいで操作性もとてもいいです。なぜ星4つなのかというとファンファーレが公式のものでなかったりゲートインしてからなぜかわからないけどレースが始まるまで長くてイライラしたことがあります。でも悪いところはそこだけなのでとてもいいゲームだと思います
数年前、「欧米かっ!」という突っ込みネタが流行った。日本は幕末以来、 欧米に追い付け・追い越せをスローガンに走り続け、とうとう欧米をお笑い のネタにする時代が来たことに本当に感動したものである。それが今では、 多くの日本人は欧米に対しては無関心の領域に入りつつあるように思う。 たまにEUなどのグダグダ振りが報道されれば、ただただ呆れる程度のもの。 マスコミは相変わらず欧米をお手本にしたがるみたいだけど、情報の受取手 のニーズからは増々乖離して行ってることに気付かない。
この本では欧米の実情が報告されているかに見えて、どのライターの方も 掘り下げ不足なのが残念である。文章の背後に、欧米をお手本とするバイアス が感じられると言えば皮肉が過ぎるだろうか。せっかく長いこと現地で生活 してるのだから、欧米社会が抱える問題の本質に異邦人の視点からもっと 切り込んで欲しかった。この本に書かれてる内容は、今までのマスコミからは 得られなかった辛口の貴重な情報ではあるけれど、根っこにあるスタンスが マスコミと同様では哀しい。
生い立ちから没後の事まで網羅されているので、ファンになったばかりの人でもこの一冊で、大まかな事は知る事ができると思う。著者には故人でも美化せず、極力公正な事実を伝えようとする真摯な姿勢が感じられた。 本人は生前のインタビュー自体少ないので、既出の内容が殆どだったが、それ以外の証言やエピソードは、長年雑誌やオジー自伝等で情報を集めていた自分でも、初めて知ったことが多かった。特にビジネスとは無縁の友人達の話は、信憑性が高く興味深く読めた。 だが、あの事故については、多くの人命を預かるツァーバスの運転手としては、不適格な人物を雇った上、交代要員もなく激務を課していた、ジェットレコードやマネージャーのシャロン達に当然重大な責任があった筈だが(飛行機の操縦以前の問題)その点については、全く言及されていなかった。やはり大きな権力には逆らえないのか。 また、訳も今いちで、意味のわかりにくい箇所も多々あった。 それでも、短くとも音楽も人間性も素晴らしかった彼の人生には、深い感銘を受けた。ファンの方には、是非お勧めしたい。
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