なんて美しく、透明感のある作品なんだろう。
一曲の音楽が楽章ごとに調和して
上質の音色になって奏でられていくような味わいがある。
『ヴァイオリンは楽しいかい?』‥孤児のエミーリアは
ピエタ慈善院でヴィヴァルディ先生に、そう声を掛けられる。
そのエミーリアを通して、亡き音楽家ヴィヴァルディに関わった
様々な人々が、まるで楽譜の音符のように出会い、共鳴し、
物語は紡がれていく。
水の都ヴェネッィアの明暗を垣間見せながら
長い間探していた楽譜にたどり着いたとき、
その裏に記されていた詩に、涙があふれる。
普段は忘れている「生きていくことの喜び」、
この作品はそこに木洩れ日のように繊細な光を当てている。
以前の版は未読。よって旧版との比較はできないが
冒頭から紡がれる緻密な世界観は圧倒的。
「日本文学としてはあくまで借り物のサイバーパンク」、
と片付ける人もいるだろうが、その深みある世界描写は
舞台を借りただけの安直なSF作品とは一味も二味も違う。
翻訳文を意識した文体、造語に近いカタカナ語、
表現部分も相応にスタイリッシュ。
クライマックス、お定まりの戦闘描写も
緊張高い文章で存分に読ませてくれる。
まず私自身、原作未読ですのでその点をご了承ください。
さて全3部作の序章となる本作ですが、長い原作を上手くまとめていると思います。
世界観の説明やキャラクターたちの紹介など「序章」としての役割も十分果たしています。
原作者の沖方丁氏が脚本を手がけていることが大きいのでしょうか。
ただ、やはり駆け足な感は否めませんでした。
これは尺の関係もあるので仕方ないのですが、登場人物の心情をもっと深く掘り下げてほしかったかなと感じます。
また絵柄もかなり凝った作りになっていますがもう少しシンプルでも良かったのではないかと・・・(この辺は個人差ですが)
カッコイイのですが、ちょっと見にくい気がしました。
とはいえ、まだ1章ですし期待できる要素も大いにありました。
今後の展開で評価も変わるのでしょうが、現時点では良作と言っていいと思います。
銀の種族の動向、ノドス達の選ぶ道。目が離せません。
原作は読んでいないにわかですが。予想していた以上によかったです。独特な作品の雰囲気がありますし、声優さんも個人的にはしっくりきました。冲方丁さんのインタビューも続編の内容に触れたりして面白かったです。
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